第47章 病魔の住処
伝染病のような病原体が移ることによる病気…いわゆる感染症は、すべての人間が発症するわけではない。
例えば、インフルエンザ。
インフルエンザに感染した人間と、数人の健康者が同じ部屋にいたとして、全員が飛沫感染するだろうか。
答えは否。
では、感染する人としない人の違いはなにか。
それは大きく2つ理由がある。
ひとつは、感染者との接触密度。
より近い距離で、より触れ合っていた人間の方が感染する確率は上がる。
そして2つ目は、抵抗力の差。
普段から体調に気をつけ、健康的な食生活をしている人間と、睡眠不足や食事の不摂生をしている人間とでは、どちらが病にかかりやすいかなど明白だろう。
ではなぜ、キラーは病にかかり、カトレアは健康のままなのか。
「…カトレア、この村に赤ちゃんっているのかしら。」
「赤ちゃん?」
村人は極端に外出を控えているため、モモはこの村にどんな人が住んでいるか知らない。
だから、思いこんでいた。
赤ちゃんなんて、いないものだと。
「いるよ! ええっと、3人…じゃないや、先月産まれた子もいるから4人か。」
「……!」
ひょっとして、わたしは思い違いをしていたのではないだろうか。
「その子たちは…、病気にかかっているの?」
どんなに健康に気遣っていても、抵抗力が低い人間が2種類存在する。
それは、老人と子供。
特に、乳児である。
「ううん、みんな元気だよ!」
晴れやかに笑うカトレアの答えを聞いて、モモは何度目とも知れぬ衝撃を受けた。
大の大人がバタバタと倒れ、乳飲み子が元気である理由。
それは…。
思い違いをしていた。
病に伏す人々が、同じような症状をしていたから。
そしてなにより、モモの歌が効かなかったから。
モモは医者でもないのに、勝手にそれだと決めつけていたのだ。
理由は、ひとつ。
「伝染病じゃ、ないんだわ…。」