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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第47章 病魔の住処




キッドは、決して優しくはない。
協力的とも言い難いし、言葉をオブラートに包んでくれることもない。

だけど、そんな明け透けな言葉だからこそ、心にガツンと響く。

恥ずかしい。

世界一の薬剤師を目指しているのに、そんなことにも気づけなかったこと。

自分の気持ちばかりで、カトレアの気持ちを考えられなかったこと。

そしてなにより、それをキッドに気づかされたことが。

彼のことを、口が悪くて冷たい男だと思っていた。

(違う…、キッドは…正しい。)

キッドの言うことはすべて正論で、それに気がつけない自分は、本当に甘かったのだろう。

医者じゃないから、村人が協力してくれないから。
そんなことは百も承知だったはず。

それでも、やると決めたのは自分だ。

ならば、キッドの言うとおり、辛い顔などしてはいけない。


「…あなたの言うとおりだわ。」

複雑な想いが胸を占める。
それを吐き出そうとして、大きく深呼吸した。

「カトレア、ごめんね。」

「ううん…ッ、私は大丈夫だよ!」

はらはらと2人を見守っていたカトレアは、取れそうなくらいの勢いで頭を振った。

お礼を言わなくちゃいけない立場なのに、謝らせてしまうなんてとんでもない。

調べてくれると言ったモモの存在に、どれだけ救われたことだろう。

「もう知りたいことはないの? 私にできることなら、なんでも調べるよ!」

ドンと胸を叩く彼女に、モモは「ありがとう」と微笑んだ。

だけど、他になにを調べたらいいんだろう。

体内からウイルスなどを発見できるか調べたくても、この島の施設では難しい。

新たな糸口を見つけたくて、頭の中を整理していると、お茶を啜ったキッドがなんの気なしに口を開く。

「…そもそも、なんでお前みたいなチビがピンピンしてるんだ。」

「え…?」

首を傾げるカトレアを、キッドは上から下まで眺めた。

「痩せ気味だし、体力も平凡そうだ。キラーに勝るところなんか、ひとつも見当たらねぇ。」


「……!!」


瞬間、頭を殴られたような衝撃を感じた。

そうよ、どうしてカトレアは無事なの?

化け物じみたキラーが発病し、カトレアが元気なその理由は?



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