第47章 病魔の住処
「……おい。」
自分の無力さに唇を噛みしめていると、ふいにキッドが声をかけてきた。
「そんな顔、するんじゃねぇよ。やるって決めたのは、お前だろうが。」
「……そうよ。」
見つけるって決めたし、諦めない。
だけど、調べれば調べるほどわからなくなって、落ち込んでくる。
「わたしは、落ち込むことも許されないの?」
やっぱりキッドは少しも優しくない。
励ましてくれることも、慰めてくれることもしないのだから。
キッドの猛禽類のような鋭い視線が、心がささくれ立った自分に向けられた。
「ああ、許されないな。」
「……ッ」
なんて人。
一緒に考えてくれるわけでもないのに。
そう心で詰った時、キッドは冷静な声でモモに告げた。
「わからないようだから教えてやる。お前は今、このガキにとって、唯一の希望だ。」
カトレアだけじゃない。
村人全員の、そしてキッドの…。
「そんなお前が、そんな情けねぇ顔をすんのは許されねぇ。お前の不安は、このガキに何倍にも増してのしかかっていくんだよ。」
わからないことも、不安に思うこともあるだろう。
だけど、それを表に出してはいけない。
今、この島で病をどうにかできるかもしれないのは、モモだけなのだから。
「お前の肩には、この島にいる人間の命がすべて乗っかっている。」
期待は全部モモに向くし、責任もすべてモモに向く。
この重圧は、耐えきれるものじゃない。
「だが忘れるな。決めたのは、お前だ。」
関わるなと何度も言った。
その度、放っておけないと関わったのはモモだ。
決めたのなら、情けない顔を晒してはいけない。
周りが安心できるように、常に笑顔を貼りつけておけ。
「それともなにか? お前の知る医者は、そんな情けねぇ顔をしてるのか?」
「……!」
モモの知る医者は、ローは、どんな難病や原因不明な病に遭遇しても、いつも不敵な表情を崩さない。
だからモモは、いつでも安心していられた。
でも、もしかしたらローも、不安に思うことがあったかもしれない。
治す立場になって、ようやく気づくことができた。
今度はそれが、自分に求められる。
「お前を守る男は、今ここにはいない。それでも立ち上がると決めたのは、お前だ。」