第47章 病魔の住処
どうぞ、と案内された家は、赤い屋根が特徴的な小さなおうちだった。
「待ってて、今 お茶いれるね~!」
「お気遣いなく…。カトレア、ご両親は? お仕事かしら。」
パタパタとせわしなく動く小さな背中に問いかけた。
「いないよ! 何年か前に病気で死んじゃったんだ!」
あまりにもあっけらかんと言われたため、理解するのに数秒かかった。
「え、じゃあ…、このリンゴ畑はあなたひとりで?」
「うん。でも、ベンおじさんや村のみんなが手伝ってくれるから、ひとりきりってわけでもないや。」
カップになみなみとお茶を淹れたカトレアが明るく答える。
ベンおじさんというのは、昨日川辺で会った あの男のことだ。
怖くて乱暴な印象があったが、実際は優しく面倒見が良い人物らしい。
「ベンおじさんやみんなが、家族みたいによくしてくれるから、全然大変じゃないよ。」
悲しい話のはずなのに、カトレアがそんな態度を少しもださないので、モモは「そっか…」と口ごもった。
それを察してか、居心地悪そうに椅子に座っていたキッドがお茶を啜りながら口を開く。
「で? お前はそんな話をしにきたのか。」
「……。」
だから、言い方ってものを知らないのか、この男は。
「あ、ごめん! 私ったら、関係ない話ばっかりして。」
「ううん、わたしが聞いたのよ。ごめんね!」
案の定、カトレアが気にして詫びるので、モモは慌てて謝った。
「ええっと、病気のことを調べるんだよね。私、なにをしたらいい?」
「うん、とりあえず、いくつか質問させてもらっていいかな。」
昨日、少しだけ質問をしたが、聞きたいことはまだまだたくさんあった。
「発病した人の症状と、職業。あと、わかればどんな生活をしているのか教えてくれる?」
カトレアは医療関係者ではないけど、感染も恐れずに毎日お見舞いや看病をしていたから、わかることがあると思ったのだ。