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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第47章 病魔の住処




「それで? キラーの具合はどうなんだ。」

急に話題がガラリと変わり、事の深刻さにモモは渋い表情になった。

「…よくないわ。副作用が出ない程度にいろんな薬を試してみたけど、症状に改善はみられないし。」

「チ…ッ」

キッドにとって、キラーはよほど大切な仲間なのだろう。
出会った頃の苛立ちも、なにもできない己へ向けたものだったと今ではわかる。

「きっと…、原因をつきとめてみせるから。」

声色が慰めるようなものになったのは、無意識だった。

「…お前はてめぇの命を1番に考えるんだな。」

「なによ、それ。」

初日に鬼の形相で、キラーを治せと怒鳴ったのは誰だったか忘れたのだろうか。


「あ、おねえちゃん!」

青々と茂るリンゴ畑から、カトレアが顔を出した。

さらに、モモの隣にいるキッドを見て、彼女の表情に喜色が浮かぶ。

「海賊のおにいちゃんだ…!」

飛ぶように駆け寄ってくるカトレアを見て、キッドが一瞬たじろぐ。

どうやら、子供は苦手らしい。

「あの…ッ、この前は悪い海賊をやっつけてくれて、ありがとう!」

「…勘違いすんな。別にお前らを助けたつもりはねぇ。」

純粋な目を向けるカトレアに、わざとらしく低い声で唸る。

(子供相手に、そんな威嚇しなくてもいいのに…。)

しかし、当のカトレアはまったく怖がる様子はない。

「うん、でも、私は助けてもらったと思うから。だから、ありがとう!」

「ぐ…ッ」

ぐしゃりと顔を歪めるあたり、とてもお礼を言われている人間の表情ではない。

なんだかため息を吐きたくなったモモに気づいたキッドは、「なにを見ている!」とばかりに睨んでくる。

「病気の原因を探すんじゃなかったのか。さっさとやれよ!」

「言われなくてもそうするわ。…カトレア、話を聞きにきたんだけど、いい?」

モモの問いにカトレアは大きく頷き、畑の向こうにある家を指差した。

「あそこがウチなの。中で話そう!」

家の中では家族がいるのではないかと思ったが、カトレアがあっという間に駆け出してしまったので、モモも後を追うしかなかった。



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