第47章 病魔の住処
今まで、面と向かって“嫌い”だと言われたことなどなかった。
またモモ自身、誰かを嫌いになることもなかった。
周囲の人たちに、恵まれていたとは思う。
モモの周りの人たちは、いつだって優しくて、愛すべき人たちだったから。
だから、その優しさに甘えて、いつの間にか見えなくなっていたのだろうか。
周りの気持ちが…。
「…モモ、戻っていたのか。」
しばらくして、ホーキンスが帰ってきた。
やはり心配をかけていて、彼はモモを探していたようだった。
「ホーキンスさん、すみません。勝手な真似ばかりして…。」
すかさず立ち上がり、頭を下げた。
「いや、勝手なことを言ってお前を拘束しているのは、俺たちの方だ。すまん。」
さんざん気遣いをさせているはずなのに、逆に謝られ、心が痛む。
無表情の裏には、深い思いやりがある。
だというのに、モモはその思いやりを無碍にしてしまった。
そして、これからもだ。
「ホーキンスさん、わたし、病の原因を探すことに決めました。ワガママを言ってごめんなさい。でも、このままにはできないんです。」
見て見ぬフリなんかできない。
だってわたしは、薬剤師なんだから。
キッドが言うように、モモの行動は周囲の気持ちを無視している。
そのことに関しては反省しているし、もっと気をつけなくちゃと思う。
だけど、モモにだって譲れないものがあるのだ。
「…俺がなにを言っても、聞かないんだろうな。」
「ごめんなさい。」
しゅんと頭を下げたら、ポンと軽く叩かれた。
「元々、無理を願ったのは俺たちだ。お前が気にすることではない。」
「でも、心配をかけました。」
「しかたない。それが俺の運命ならば。」
そう言うと、ホーキンスはどこからかカードを取り出して見つめた。
彼の占いはよく当たる。
まさか、こんな未来を予見していたのだろうか。
「村へ行く時は、俺かキッドに声を掛けろ。共に行く。」
「あ…、わかりました。ありがとうございます。」
ホーキンスの提案を受け入れたけど、彼はともかく、キッドが自分と共に来るのだろうか。
横目で様子を窺ったけど、彼はキラーを見つめたまま、チラリとも視線を向けてくれなかった。