第47章 病魔の住処
その日は薬を作りながら、キラーの看病をして過ごした。
キッドもホーキンスも、常に室内にいるわけではなかったので、2人が不在の隙に歌を唄い、キラーの体力が少しでも回復するように努める。
しかし、翌日になっても容態は悪化していく一方で…。
(やっぱり、もう一度村に行くしかないんだわ。)
例え村人に話を聞けなくとも、調べられることはきっとあるはずだ。
そう思い悩みながらキラーの汗を拭っていると、外へ出ていたキッドが帰ってきた。
「食え。」
おもむろになにかを寄越したと思うと、渡されたのは黒パンに炙った塩漬け肉、それからチーズと瓶に入った葡萄酒だった。
どれも日持ちする保存食。
村に買い出しに行けないからか、彼らの食事はもっぱら保存食で済ましているようだ。
そういえば、昨日森でヘビイチゴを摘まんだきりなにも口にしていない。
思い出したとたん、ぐぅ…とお腹が鳴った。
「…ありがとう。」
こんな簡素な食事はひさしぶりだ。
ハートの海賊船には菜園があって食材には事欠かないし、島で外泊した時も、ローは食事に関して金に糸目をつけない。
美味い不味いはともかく、食事は栄養満点であること…が医者であるローの信条らしい。
けれどここは、そんな彼のもとではない。
だからモモは、ゴムのように固い黒パンに、塩気が強すぎる肉をのせて頬張った。
ほんのりと残る小麦の香ばしさが広がり、美味しいと思わなくもないが、なにしろ口内の水分をすべて持っていかれる。
しかし、渡された水分は葡萄酒で、モモには飲むことができない。
「あの…。お水とかって、あったりするかしら。」
「水だ? ねぇよ、そんなもん。」
そう言ってキッドは、手にしていたウイスキーを瓶ごと煽る。
なるほど、彼らにとって酒は水に等しいらしい。
どうやらモモがここで生きていくには、どちらにしても、もう一度村へ出向かなくてはいけないようだ。