• テキストサイズ

セイレーンの歌【ONE PIECE】

第46章 美女と野獣




「待って!」

無言のまま腕を引き、モモを村から連れ出そうとするキッドを呼び止めた。

けれど彼は、振り向くどころか返事もせず、足を止めることもない。

「ねぇ、待ってってば…!」

堪えかねて掴まれた腕を痛いほど引けば、ようやくこちらを振り返った。


「…なんだ。」

「なんだじゃないわ! ずっと待ってと言ってるのに!」

無視をしといて、それはないだろう。

それに、モモが聞きたいことを、キッドはたぶん予想している。

「さっきのアレは、いったいどういうこと?」

「アレ? なんのことだ。」

「とぼけないでよ! 村人の言っていたこと、本当なの?」

忘れたとは言わせない。
村人は確かに“お前たちのせいで俺たちはこんな目に”と叫んでいた。

「病気の原因は、本当にキッドたちが…?」

でも、キッドもホーキンスも、そんなことは一言だって言ってなかった。

大真面目に尋ねているのに、キッドはこちらをバカにしたように「フン…」と鼻で笑う。

「そんなわけあるか。」

それはもう、清々しいほどの否定。

「……違うの?」

「バカか、お前。キラーの様子を見ただろう。なんで俺たちが、村人はともかく仲間を苦しめなきゃならねぇ。」

確かに…そうなんだけど。

「じゃあ、あの人たちが言っていたのは、どういう意味なのよ。」

「そんなの、俺が知るか。」

「えぇ?」

知るかって…。

村人だって意味もなくあんなことを言うはずない。
それなのに、当の本人は理由すら知らない。

「だったら理由を聞かないと。」

もしかしたら、そこに病を治すヒントがあるかもしれないし。

「…お前、自分がなにをされそうになったのか覚えてんのか。」

「……。」

「忘れたなら教えてやる。お前は今、殺されそうになったんだよ。」

キッドの言うことは、誇張でもなんでもない。
事実だ。

血走った目から向けられたもの。
それは、紛れもなく“殺意”だった。



/ 1817ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp