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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第46章 美女と野獣




目を血走らせた村人の手が、いくつもモモへと伸びる。

怒りを向けられる理由すらわからず、ただただ困惑するしかできなかった。

「待ってください…!」

「うるせぇッ、この疫病神!」

村人の男がモモの胸ぐらを掴む。

その時だった…。


ドン…!


壊れるくらいの音を立てて、宿屋の扉が開け放たれる。

「お、お前は…。」

モモの後ろに立った村人が、怯えの混じった驚きの声を出す。

だけど、モモは胸ぐらを掴まれているため、振り向くことができず、誰が入ってきたのかわからない。

「…そいつを離せ。」

この声は……。

「な、なんだお前、なにをしに来やがった…!」

そう威嚇する村人の声は、明らかに震えている。

「聞こえねぇのか、俺は離せって言ってんだよ。」

そう言うやいなや、男は大股にこちらへ近づき、後ろからモモの腕を引っ張り、村人から引き剥がした。

その人物を、モモは意外そうに見上げる。


「……キッド。」

「……。」

キッドはモモに声を掛けることなく、そのまま宿屋を出ようとする。

「ま、待て…ッ」

追いすがるように、呼び止められる。

「あァ…?」

不機嫌な目つきでキッドが振り向くと、村人たちはそろってヒッと息を飲む。

キッドが何者なのか、わかっているのだろう。

けれど、それに負けじと村人も声を絞り出した。

「お、お前たちのせいで…、俺たちはこんな目にあってるんだぞ…! 責任を取りやがれ!」

「え…?」

この病がキッドたちのせい?

どういうことかわからずキッドを見つめるが、彼はフンッと鼻を鳴らす。

「知らねぇって言ってんだろ。ぶっ殺されてぇのか。」

冗談ではなく、キッドにはその力がある。

それがわかってか、村人は顔を青くして固まった。

「チ…ッ、行くぞ。」

絡みつくような視線を向けられたまま、モモは腕を強く引かれて宿屋から連れ出された。



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