第10章 覚醒
「お前ら、いい加減にしろ…。」
まるで寸劇のような友情の確認は、ローによって幕を下ろされた。
ローはベポに抱かれたままのモモの手を取り、真剣に言った。
「モモ、お前が何者であっても関係ねェ。ずっと俺の…、俺たちの傍にいろ。」
それは、ぶっきらぼうな彼がした、最上級の愛の告白。
「うん…!」
ベポの腕から飛び降り、そのままローに抱きついた。
ローもまた、しっかりと抱き返してくれる。
(ロー、わたし、今まで生きてきた中で、こんなに幸せなこと、ないわ。)
声を封じ込め、俯きながら生きてたわたしが見たら、なんて言うだろう。
ねえ、これ、夢じゃないよね?
わたし、こんなに幸せでいいのかな…。
幸せを噛みしめながら、ローの胸に擦り寄った。
モモを抱きしめた瞬間、彼女からカモミールの香りがふわりと漂った。
香りに誘われて、擦り寄る彼女の頭に口付ける。
ずっと、自分だけが想っているのだと思ってた。
少しでもこっちを見て欲しくて、他の男の目に触れさせたくなくて、自分のもとに縛り付けた。
そんなことをしても意味がないってわかっていたのに。
だから、先ほどの歌には震えた。
痛いほど、モモの気持ちが伝わったから。
『あなたが好き。絶対に傍を離れない』と。
「…夢みてェだ。」
「え…?」
心の呟きが声に出てしまったようだ。
「なんでもねェよ…。」
誤魔化すように、愛しい彼女に口付けた。
「あ、もう完全に存在を忘れられてるッスね。」
「しょうがねぇよ、俺たち、空気なんだから。」
仲間の存在を思い出して、モモが顔を真っ赤に燃やすのは、それからすぐの話。