第46章 美女と野獣
軽くみていた。
思っていたよりも、ずっとずっと、深刻な事態。
「…キラーが体調を崩したのは、いつ頃のことなの?」
動揺したせいか、ズキズキと頭痛がする。
けれど、確認しなくちゃいけないことは、あまりにも多すぎる。
「半月ほど前だ。だが、初めはこんなに酷くはなかった。」
最初は、ただの腹痛だろうと。
しかし、1週間もしないうちに容態は急激に悪化。
そして数日前から意識すらも失ってしまったという。
「2人は、その間もずっとここに?」
「当たり前だ。仲間が苦しんでいるのに、自分たちだけ逃げ出せるか!」
伝染病かもしれない…という考えは、2人にもあったのだろう。
だから、キラーを船に連れて帰らない。
もし、病原菌を持ち込んで船内感染でもしたら、最悪の場合、海賊団は全滅する。
「でも、あなたにもホーキンスさんにも、不調は現れない?」
見たところ、彼らに兆候は現れていない。
感染力はそれほど強くないのだろうか…?
「ダメね、わからないことが多すぎる。わたし、村に行ってみます。」
2人の話では、村人たちも苦しんでいるらしい。
それならば、それも放ってはおけない。
しかし、家を出ようとしたモモを、キッドが鋭く呼び止めた。
「よせ。」
「……なぜ?」
村に行けば、もう少しなにかわかるかもしれないのに、引き止める理由がわからない。
感染を心配してというならば、この家にいても同じことだ。
「村の連中とは関わるな。」
「それは、放っておけということ…?」
「そうだ。」
自分たちが助かれば、それでいいと…?
この時点で、モモはすっかり頭に血が上ってしまっていた。
「わたし、あなたに指図される覚えはないわ。」
横暴そうに見えるけど、本当はそんな人じゃないと勝手に思っていた自分がバカみたい。
「おい、待て!」
制止するキッドの声を無視し、モモは家を飛び出した。