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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第46章 美女と野獣




キッドの背を追い、ホーキンスに連れられてモモは一軒の古びた家の前へとやってきた。

そこは村から少し離れていて、近接する家もない。

「どうしてこんな村外れに滞在しているんですか?」

集落から離れていては、買い出しとか なにかと不便だろう。

「俺たちが村で寝泊まりすると、面倒なことになる。」

それは、彼らが海賊だからだろうか。

しかし、このご時世、海賊が村に立ち寄ることなど珍しくもない。

海に面する村ならば、旅人を顧客とした宿屋がある。
利用客の中に、海賊が紛れ込んでいたとしても、なんら不思議なことでもない。

それなのに、ホーキンスたちが帰ってきた家は、おそらく元は廃屋であっただろう建物だ。

「ホーキンスさんたちの船はどこにあるんですか?」

こんなボロ家に滞在するのなら、船へと戻った方が何倍もマシのはず。

「俺たちの船は、この山の向こう側にある。村の港には他の船が停まっていてな…。船を停泊させるスペースがなかった。」

だからわざわざ山の向こうの海岸に船を停め、この村にやってきたのだと言う。

でも、あの村には他の船の乗員がいるようには見えなかった。

なぜなら、モモはこの島に来て、村人の姿すら見かけていないから。

「ともかく、あの男の容態を診てやってくれ。」

ホーキンスが家の中へと促すのと、痺れを切らしたキッドが「おい、なにしてる!」と叫んだのは、ほぼ同時だった。


ギィ…と建て付けの悪いドアを押すと、廃屋ならではのカビ臭さが鼻をつく。

(とても病人を看病する環境じゃないわね。)

それでも、彼らが山の向こうの船へ戻らない理由はなにか。

「ちんたらするんじゃねぇ、早くしろ…!」

苛立ちを隠さない様子で、キッドが唸る。

薄暗い室内には、ベッドがひとつだけあり、その上には仲間であろう男が横たわっている。

「……。」

その男の様子を診ようとして近づいてみたが、思わず言葉を失う。

顔色どころか、顔すらわからない。

男は、マスクを被っていた。
それも、頭の上から顎の先までスッポリと。



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