第46章 美女と野獣
思いがけずホーキンスと再会したモモは、彼らの潜伏場所へと向かっていた。
『力を貸してほしい。』
そう言われたモモだったが、彼に詳しい話を聞く前に、キッドが「ついてこい!」とモモの手を強引に掴み、引きずるように歩きだしたのは、つい先ほどの話だ。
「ちょ、痛いわ。離して…!」
ローより身長の高いキッドは、歩幅だけでもモモの倍はある。
引かれる手は痛いし、ついていくだけでも息が上がる。
そんな抗議を無視し、歩き続けるキッドとモモの間に、ホーキンスが割って入った。
「やめろ、彼女に乱暴は許さない。」
「ああ…ッ?」
腕を振り解かれたキッドが、不機嫌を隠さない様子で睨みつける。
(なんなの、この人…。)
態度は失礼だし、行動は暴力的。
人を見かけで判断してはいけないが、風体もおよそ、紳士的とは思えない。
いや、ローやルフィたちが特殊なだけで、本来海賊とはそういうものなのかもしれないけど。
「邪魔すんな、ホーキンス…。」
睨み合い、一触即発の雰囲気が漂うので、モモは慌てた。
「あの…! そんなケンカをしなくたって、わたしに協力できることがあるなら、しますよ。」
事情はわからないが、助けを請われているのだ。
断る理由などない。
「なら、さっさとついてこい!」
「な……!」
今度は手を取られなかったが、キッドは大股に歩いていってしまう。
その横暴な態度に、モモは今度こそ顔をしかめる。
(本当に失礼な人…!)
つい数日前まで海軍に捕まっていたこともあり、横暴な人間には辟易していた。
そんな感情が思わず顔に出てしまったモモの横で、ホーキンスが「すまない」と詫びる。
「あ、いえ。ホーキンスに謝ってもらうことじゃないです。」
僅かに口もとを緩めたホーキンスは、ずんずんと遠ざかっていくキッドの背中を見つめた。
「…あの男も、焦っている。許してやってくれ。」
キッドは本来、女性に乱暴するような男ではない。
そう庇うホーキンスに、少しだけ驚いた。
「なにがあったんですか?」
力を貸してほしいこととは、いったい…。
「仲間が、倒れた。」