第46章 美女と野獣

ローから経緯を聞いたメルディアは、軽い目眩を覚えていた。

｢モモが…海軍に連れ去られたですって？｣

やはり、勘は当たってしまった。
それも、とてつもなく悪い方向に。

｢冗談じゃないわ！ だったら、あの子はなんのために今まで…ッ｣

今までの我慢は、すべて水の泡じゃないか。

｢ロー…、あなたがいながら、どうして…！｣

非難するようにローを睨む。

でも本当は、彼を責めるのは間違い。
きっとモモは、自らその道を選んだのだろう。

……あの時みたいに。

けれどローは、そんなメルディアの視線を真っ正面から受け止めた。

｢言い訳するつもりはねェ。アイツを守れなかったのは、俺に力がなかったからだ。｣

｢……ッ｣

そんなふうに言われてしまえば、責めることもできなくなってしまう。

｢だが、このままにするつもりもない。｣

｢どうするっていうの？｣

モモを連れ去ったのは、あの赤犬。
彼の実力は、このグランドラインで海賊を名乗るなら、知らぬ者などいない。

｢当然、連れ戻すに決まってんだろ。｣

それなのに、ローはモモを連れ戻すことを選ぶ。

｢メルディア、お前がモモのビブルカードを持っているんなら、俺たちによこせ。｣

｢……。｣

モモのビブルカード。
それを求めて、彼らは自分を探しに来たのだ。

ここで出会ったのは、偶然なんかじゃなかった。


｢モモのビブルカードなら、持っているわ。｣

｢本当か！ メル姉さん！｣

｢ええ。｣

なにかあった時のために、メルディアが作っておいた。
現に自分が新世界にいるのも、モモのビブルカードをたどってのこと。

けれど、ここで彼らに渡すことは、モモの意志に反することだ。

もしかしたら、それによって命の危機に陥るかもしれない。


｢…ねえ、ロー。ひとつだけ聞かせて。｣

｢なんだ。｣

正確はたぶん、渡さないこと。

モモのことはもちろん助けたいけど、ローやコハクを危険に晒すことはできない。

でも…。


｢あなたはどうして、あの子を助けたいの？｣


私はもう、後悔したくないのよ。