第46章 美女と野獣
「コハク…!?」
ローの影からひょっこり出てきた子供の姿に、メルディアは心臓が止まりそうなくらい驚いた。
それもそのはず。
メルディアはずっとコハクとモモを探していた。
「あなた、どこにいっていたの! ずっと探していたのよ! それに、どうしてローが…ッ」
ローとの再会。
コハクの発見。
そして2人が共にいること。
次々と起こる出来事に混乱する。
「落ち着けよ、メル。ちゃんと書き置きしていっただろ?」
島を出る時、メルディアが心配するだろうと思って、コハクは彼女のために書き置きをしていったのだ。
しかし、そんなコハクの言葉に、メルディアは青筋を浮かべる。
「書き置きですって…? まさか、これが書き置きだって言うんじゃないでしょうね。」
そう言って、彼女は懐から1枚のメモを取り出す。
それを横からベポが読み上げた。
「えーと、なになに?『旅に出る。母さんも一緒。』」
メモに書かれていたのは、この一文のみ。
もはや、書き置きというより ただの走り書きだ。
「こんなので、わかるわけないでしょう!」
久しぶりに2人を訪ねてみたら、家はもぬけの殻で、テーブルにはこんなメモ。
見つけた時の自分は、さぞかし間抜けな顔をしていただろう。
以来、メルディアは商売もそこそこに、2人の行方を追い続けていた。
「…まあ、いいわ。無事だったんだもの。それより、どうしてあなたがローと一緒にいるの?」
それこそが、1番の驚き。
(まさか、記憶が戻った…?)
淡い期待が胸に芽生える。
しかし、メルディアの期待は呆気なく掻き消された。
「ただの成り行きだ。コハクとモモは、ウチの海賊団に入った。」
「そう…。」
それでも、奇跡には違いない。
モモが再びローと出会えて、一緒にいるのだから。
「そういえば、モモはどこ? 早く話がしたいわ。」
どうしてこうなったのか、彼女の口から聞きたい。
しかし、モモの居場所を尋ねたとたん、全員の表情が曇る。
「…どうかしたの?」
嫌な予感がした。
残念なことに、メルディアの勘はよく当たる。
「メルディア、お前に頼みがあって来た。」
数年ぶりとなるローの頼みに、メルディアは耳を傾ける。