第46章 美女と野獣
島に上陸したローたちは、早速ビブルカードをたどってモモの友人を探し始めた。
「便利だな、ビブルカードって。オレ、その紙切れにそんな力があるなんて知らなかった。」
遠く離れている場所にいる人と会話できる電伝虫にも驚いたが、どこにいても持ち主を指し示してくれるビブルカードの利便性もそうとうなものだ。
「ああ。だが、一歩間違えば命取りになる代物だ。」
「なんで?」
「バカだなぁ。考えてもみろよ、コレが海軍の手にでも渡っちまったら、どこに隠れたってモロバレなんだぜ。」
そういうことか、とシャチの説明に素直に納得した。
「電伝虫だって、盗聴できる黒電伝虫ってのもいる。調子に乗ってアレコレ喋ると、あとで後悔するッスよ。」
「へぇ…、便利なだけじゃないんだな。」
「なんでもかんでも、道具に頼りきるんじゃねェってことだ。」
確かにそうだけど、正直なところ、使えるものはうまく使っていきたいというのがコハクの本音だ。
「どうやら、この店にいるようだな。」
ビブルカードが指したのは、一軒の酒場。
本当にここにメルディアがいるのだろうか。
「行くぞ。」
酒場の戸を押すと、カランカラン…と懐かしいベル音が鳴る。
夕方ということもあり、店内は客で賑わっていた。
「美女、美女…ッ。どこにいるんだ~?」
懲りもせずに、シャチが目的とずれた探し方をする。
「おれ、人間の美女ってよくわかんない。クマならわかるんだけどなぁ…。おい、ジャンバール! ちゃんと探すんだぞ!」
「…そういえばコハク。そのモモの友人とやらは、名前をなんと言う?」
「そっか、名前言うの忘れてたな。メル…いや、メルディアだよ。」
「「……え?」」
なぜか、ジャンバール以外の全員が固まった。
「……? なんだよ。」
「いや、俺たちの知り合いにも同じ名前の人がいてさ~。…いやいや、まさかなぁ。」
確かに彼女は、スタイル抜群の派手な美人。
ついでに、今はどうか知らないが、海賊だ。
それに、彼女はローの元…--。
「あら、ローじゃない? こんなところで会うなんて、奇遇ねぇ。」
突如、声を掛けてきた女性は、まさに探していた人物だった。
「メル!」
コハクが驚きの声を上げるのと同時に、シャチたちは「ああ…」と空を仰いだ。