第46章 美女と野獣
「おい、ホーキンス。てめェ…、いつまで油を売ってやがる。その女は誰だ。」
突然 第三者の声が入り、モモはとっさに振り向いた。
そういえば、この場にもうひとり存在していたのをすっかり忘れていたのだ。
燃えるような赤毛に、獰猛さが滲み出た、野獣のような男。
「ユースタス…。」
「……!」
ホーキンスが彼の名を呼び、モモは男の正体を知る。
ユースタス“キャプテン”キッド。
4億7千万もの懸賞金が懸かった、最悪の世代のひとり。
彼はホーキンスと同盟関係にある。
「俺の友人だ…。」
多くを語らないホーキンスは、モモをキッドにそう紹介する。
“友人”という紹介に、軽くときめいた。
よかった、友達だと思っていたのは自分だけじゃなかったんだ。
「ダチだぁ…!? なんでお前がトラファルガーの手下と。」
威圧するように睨まれた。
(手下って…。)
確かに船長とクルーだけど、なんだか嫌な感じだ。
少なくとも、ローは仲間を手下と呼ばない。
「俺の友人関係だ。お前にとやかく言われることじゃない。」
さり気なく、ホーキンスはモモとキッドの間に入る。
目で、「手を出したら承知しない」と訴える。
それを受けて、キッドは明らかに鼻白んだ。
「フン…。そんな貧相な女、俺がどうにかするとでも思うのか。」
「……。」
貧相な女って…。
まあ、事実だけど。
失礼すぎるこの男に、今度こそ不快感を持つ。
「モモ、お前は…確か薬剤師だったな?」
「はい、そうですけど。」
思い出したかのように言うホーキンスに、モモは頷いた。
すると弾かれたように反応したのは、意外にもキッドだった。
「薬剤師だと…!?」
「……!?」
ぐいっと胸ぐらを掴まれ、態度の急変に驚く。
「やめろ。」
すかさずその腕をホーキンスが制し、おかげで苦しいと感じる間はなかった。
「ど、どうしたんです…?」
わけがわからず戸惑うモモを、ホーキンスは静かに見つめて、キッドは睨みつける。
「モモ、力を貸してほしいことがある。」