第46章 美女と野獣
幸いなことに、この島はそれほど広くないようだ。
しばらく川沿いに歩いていくと、村にたどり着くことができた。
「ああ、よかった…。」
まずは、ここがどこだかを聞いてみないと。
「でも、聞いたところでどうしよう。」
モモは航海術を持っていないし、仮に他の船に乗せてもらえたとしても、政府に存在を知られてしまった今、再び捕まる可能性が高すぎる。
せっかく不可能だと思っていた脱出ができたのだから、どうにか身を潜めたい。
できるなら、ローやみんなと、もう一度会いたい。
諦めていた未来がほんの少しだけ見え、モモはこの機会を無駄にしたくなかった。
「それにしても…、ずいぶん静かな村ね。」
村に足を踏み入れてからしばらく経つが、まだひとりの村人とも遭遇していない。
まだ陽が高いのだから、仕事をしていてもおかしくないはずなのに、村は気味が悪いほど人の気配がなかった。
「でもまさか、誰もいないわけじゃないでしょうし。」
民家はいくつも立ち並び、廃退した様子もない。
明らかに、誰かが住んでいる家だ。
戸を叩いて出てきてもらおうかと悩むが、この異様な雰囲気がそれを躊躇わせる。
「もう少し、見て回ろうかな。」
もしかしたら、単純に広場かなにかで集会があって、村人がみんな集まっているのかもしれない。
モモが小さな村に住んでいた頃、そんなこともあった。
小さな村ほど繋がりが深くて、そういう掟を重んじるものだ。
異様な空気に萎縮しながらも村を探索していると、ようやく人影を見つけた。
けれど発見した2人の男は、明らかに村人の装いではない。
旅人か、それとも海賊か…。
おそらく雰囲気的に後者だろうと警戒した時、2人の男もモモに気がつき振り向いた。
「……!」
驚いて、目を見開く。
こんなところで会うとは思わなかったから。
『心配しなくとも、いつかまた会えるだろう。カードがそう言っている。』
いつか、彼はそう言っていた。
縁は切れない、とも。
そう、彼の占いは本当によく当たる。
「ホーキンスさん!」
懐かしい名を呼んだ。