第46章 美女と野獣
モモとメルディアは、いったいどこで知り合って、どうして友達になったのかと首を傾げてしまうくらい、タイプの異なる人間だった。
一度本人たちに尋ねてみたことがある。
すると2人は顔を見合わせて曖昧に笑うものだから、結局コハクには今もその馴れ初めがわからないままだ。
そもそもコハクは、友達というものがよく理解できない。
それというのも、生まれた時からモモと2人きりで、友達を作る機会を失ったからかもしれない。
だけど、それを言うとモモは悲しい顔をするだろうから、コハクはこっそりメルディアに聞いてみたのだ。
友達とは、なにかと。
するとメルディアは、モモ手作りのニホンシュを傾けながら、艶美に微笑む。
『そうねぇ…。損得を考えず、打算なしで付き合える人のことじゃないかしら?』
なんだそれ。
商人であるメルディアの言うことは、たまによくわからない。
当時はそんなふうに思ったものだが、今ならそれが理解できる。
セイレーンであるモモと付き合うのは、外部の人間にとって、とてもリスクの高いものだった。
頻繁に行われる物資の補給。
多忙の中で費やされる航海の時間。
お金も時間も、いったいどれほど失われたことだろう。
海軍に見つかれば、モモを匿った罪に問われてもおかしくはない。
けれどもメルディアは、決してモモに見返りを求めなかった。
友達なのだから、当然! と。
損得を考えず、打算なしで付き合える人。
そんな人、一生にひとり見つかれば儲けものよ。
だから、今 友達がいないからって、焦ることはない。
そうメルディアは諭してくれた。
「モモのダチがビブルカードを持っているだと?」
確認するように問い返すローに、コハクはしっかりと頷いた。
「ああ、絶対に持ってる。それに、あの人なら全面的に協力してくれるはずだ。」
メルディアは今や、大商人と言っても過言ではないほど、業績を伸ばしていた。
そんな彼女の協力を得られることは大きい。
ただし問題は、メルディアがどこにいるか。
そのことだけが、コハクの表情を曇らせた。