第46章 美女と野獣
「はァ…。こんなことになるんなら、モモのビブルカードを作っときゃよかったぜ。」
今後について本格的に話し合われる最中、シャチがボヤくように呟いた。
「ビブルカード?」
それがあればどうにかなるのかと疑問に思い、コハクはシャチに尋ねる。
「ああ。ビブルカードってのは、爪を使って作り出す紙切れなんだが、不思議とその爪の持ち主の居場所を教えてくれんだよ。」
こんなふうに…とポケットから紙切れを取り出し、樽の上に置いた。
すると本当にただの紙切れのようなそれは、風も吹いていないのに、ひとりでにカサカサと動き出す。
「ちなみにこれは、ベポのビブルカードな。」
確かに紙の行く先には、オレンジのツナギを纏った白クマがいた。
しかし、コハクはベポに視線を向けず、しげしげとビブルカードを見つめて考え込んだ。
ビブルカード。
特定の人物の居場所がわかる。
そうだ、これは……。
「…母さんのビブルカード、あるかもしれない。」
「………はッ!?」
突然の告白に、シャチの反応が遅れた。
見れば周りも驚きに目を剥いている。
「おいおいッ、それ本当か!? だったら海軍の船を襲撃するなんていうヤバイ橋を渡らなくても、モモの居場所がわかるじゃねぇか!」
確かにウソップの言うとおり。
言うとおりなのだが…。
「コハク、どういうことだ。」
重要な新事実だが、ローはコハクの表情が明るくないのを見て、冷静に問いかける。
「オレ、そんなものがあるって知らなくて。だけど、言われてみれば心当たりがある。」
「心当たり?」
モモは政府の目から逃れるため、ずっと孤島に閉じこもっていたけど、思えば いつ海軍に見つかってしまってもおかしくはなかったのだ。
そんなモモを“彼女”が放っておくはずがない。
「母さんの部屋に小さな瓶が置いてあるんだ。その中に、それと同じ紙切れがある。」
言われてローは、モモの部屋の窓際に、小瓶に入ったビブルカードがあったのを思い出した。
「だがあれは、モモのダチのものだと聞いたが。」
そう、あれはモモの唯一の友達のもの。
「その友達が、母さんのビブルカードを持っているはずだ!」
きっと持っている。
メルディアならば…。