第46章 美女と野獣
「そうか! わざわざ海軍のヤツらが本拠地に戻るのを待つことねぇよな。」
それにしたって、船には元帥であるサカズキが乗っているのだが、今はそれを考えないようにする。
「それに、あの規模の船だ。途中で補給のために、島や海軍支部にでも寄るだろ。そこを攻めた方がマシじゃあねぇのか。」
船大工であるフランキーは、海軍の船の大きさから、航海の最中にどのくらいの距離で補給を必要とするか予想する。
けれど、いくらそんなことを予想しようとも、この作戦には致命的な欠陥がある。
「ヨホホホ…。でも私たち、海軍本部へ向かう手段がありませんねぇ。」
「「……。」」
そう、そこが問題なのだ。
グランドラインという海は、どれだけ正確な海図があっても、目的地へたどり着くことは不可能に近い。
なぜなら、通常のコンパスは指針が狂って意味をなさないし、命綱であるログポースも、次に進む島が決まっており、その場所以外に案内してくれない。
永久に固定の島を指す、エターナルポースでもない限り。
「おい、ロー。お前、七武海だったんだろ。海軍本部のエターナルポースとか持ってねぇのか?」
「…ないな。」
サンジの言うとおり、ローは少し前まで政府側の海賊、七武海だった。
七武海はいつでも政府の召集に応えられるよう、エターナルポースを与えられている。
しかし、もとよりドフラミンゴを倒すことを目的として七武海に加入していたため、ルフィと共に行動を起こした頃には、エターナルポースなどさっさと捨ててしまっていた。
その選択が、今はなにより悔やまれる。
「チッ。それじゃ、また振り出しに戻っちまったじゃねぇか。」
エターナルポースがないと知ったサンジは、落胆を隠さずタバコに火をつけた。
「あら、そうでもないわよ。」
暗くなりかけた雰囲気の中、一変してナミが明るい声を出した。
「え、どういうことだいナミさん。」
「海軍本部へのエターナルポースは、なにも七武海だけが持っているものじゃないわ。」
むしろ、海賊である彼らが持っている方が特殊なのだ。
本来なら…。
「海軍の船なら、必ずあるはずよ。」
つまり、強奪すればいい。
そういうこと。