第46章 美女と野獣
「…わかった、わかったよ、もう。」
最初からダメもとの抗議だったのだろう。
ウソップはがくりと肩を落としつつも、それ以上、異を唱えることはしなかった。
「けどよぉ、実際問題どうするつもりなんだよ。まさか本当に海軍基地をしらみつぶしに探す気か?」
それはあまりに現実的じゃない。
なにより時間が掛かりすぎる。
「だが、赤犬たちの行き先がわからねェ。」
わからないからには、手当たりしだいに基地を巡るくらいしか方法が思いつかない。
しかし、そこで思いもよらぬ声が上がった。
「いや、行き先ならわかる。」
そう答えたのは、モモと同じくホワイトリストの手配者であるというサクヤ。
「なんだと? どういう意味だ。」
今 1番知りたい情報に、ローは食いついた。
「モモはホワイトリストのS級手配者じゃ。それならば、行き先は海軍本部に決まっておる。」
「本部…? なぜわかる。」
「無論、私も昔、海軍に捕まったことがあるからのぅ。」
突然の告白に全員が「えッ!」と声を上げ、驚きを露わにした。
「そう驚くこともあるまい。私とて、手配者のひとりなのだ。」
サクヤは白い髪を指先で弄びながら、「今はその話はよい」と本題に戻させる。
「ランクの高いホワイトリストの手配者は、その秘密を解明するため、一度本部にいるベガパンクのもとへと送られる。」
生態の研究材料となるのだが、わかることなどほとんどなく、行われるのはメディカルチェックのようなものだ。
「その後はどうなるかわからぬが、初めに本部へ行くことは間違いない。」
とても貴重な情報だが、行き先が行き先だけに、一同は頭を悩ませる。
「よりによって海軍本部かよぉ! あそこにゃバケモノみたいなヤツがぞろぞろいるんだろ!? いーぎーだーぐーねー!!」
頭を抱えて泣き崩れるウソップに、ロビンは「あら?」と首を傾げる。
「なにも海軍本部に行くことはないんじゃない?」
「え、なんか手があんのかロビン。」
「行き先がわかっているのなら、そこにたどり着く前に、モモを取り返せばいい話よ。」
わざわざ強敵の多い本部で戦うことなどないのだと指摘した。