第46章 美女と野獣
ローとコハク、2人の想いが重なり合った時、医務室のドアがバン!と大きな音を立てて開け放たれた。
驚いて振り向くと、ドアの外にはハートの海賊団のクルーが勢揃いしていた。
「キャプテン…、コハク…! 良かった、おれ、2人なら絶対そう言ってくれると思ってた!」
ベポが泣きながら室内に駆け込んでくる。
「バカ、当たり前じゃねぇか! 俺はちゃんとわかってたぜ。船長がモモを見捨てるわきゃねぇって!」
そう言いながらも、シャチの鼻は赤い。
きっと胸中は不安だったに違いない。
「モモは仲間なんだから、連れ戻すのは当然ッス! 赤犬のヤロー、ぶっ飛ばしてやる!」
いつもは温厚なペンギンだが、今日ばかりは腹が立っているらしい。
闘志が爛々と漲る目が本気だ。
「俺はモモに一度命を救われた。それを返せるのなら、この命、いくらでもかけてやる。」
最後に入ってきたジャンバールは、その大きな身体で腕を組み、いつでも戦闘準備は整っているとローとコハクを見つめた。
「みんな……。」
コハクは呆然としたように呟く。
なぜなら、誰ひとりとして政府に立ち向かうことを厭わず、モモを取り戻そうとしているから。
「いいのか、お前ら。相手は赤犬だ。ヘタすりゃ、死ぬかもしれねェぞ。」
そうローが問いかけても、誰も恐れの色を示さない。
「バカにしないでよ、キャプテン。おれたち、仲間を犠牲にして先に進めるようなクズじゃない。」
「そうッスね。バカにしてるのは、むしろモモの方じゃねぇか。」
「おう。なら、みんなでモモに一言いいに行こうぜ。」
「一言で済めばいいがな…。」
だからモモに会うまで、死んだりしない。
全員の覚悟を、ローは見て取った。
「よし、なら…、決まりだな。」
場所もわからぬ目的地へと、ハートの海賊団は指針を向けた。