第46章 美女と野獣
強く握りしめた拳の中に、なにか硬いもの感じた。
なんだろうと目を開け、手のひらを開くと、星の輝きを放つエメラルドの指輪がコロリと出てきた。
モモの指輪だ。
入浴の時に預かって、そのまま返しそびれていた。
彼女にとって、大切なものだ。
返してやらないと……。
「───ッ!!」
一瞬にして覚醒したローは、跳ねるように飛び起きた。
すると同時に、身体に激痛が走り顔を歪める。
「あ、バカヤロー。急に動いちゃダメだ!」
慌ててローの身体を抑えたのは、船医であるチョッパーだ。
「アイツは…ッ、モモはどこだ…!」
問うべき相手ではないと頭ではわかっていても、誰かに問わずにはいられない。
チョッパーは困ったように口ごもる。
「連れていかれたよ。」
答えたのは、カチャカチャと医療器具の片付けをしているコハクだ。
「連れて、いかれた…。」
意識を失う前の記憶が、じわじわと蘇る。
最後に見たのは、彼女の笑顔。
「……ッ!」
とんでもない悔しさと共に焦りが湧き上がってきて、ベッドから起き上がる。
「おい、ロー! 動くなって!」
チョッパーが制止するも、ローは無理やりベッドから出た。
「どこ行くんだよ。」
冷静とも思えるような口調で、コハクが問いかけてくる。
「どこって、アイツを取り返すに決まってんだろ!」
当たり前のことを聞くコハクに、ローは軽い苛立ちを覚える。
「…どうやって?」
「どうやってって…--」
初めてコハクと目が合った。
彼の目は、冷静で真剣なものだった。
「追いかける」と言いたかった。
けれど、コハクの目を見て、ローは胸の中が急激に冷えていくのを感じた。
今は、何時だ…?
「コハク…、俺はどのくらい寝ていた。」
モモが連れていかれてから、いったいどのくらいの時間が経過しているのか。
「もう半日になるよ。」
半日…?
モモは数時間で効果が切れると言ったのに、それすらも嘘だったのか。
それほど時間が経過して、行き先もわからぬ軍艦を追うことができるのか。
答えは尋ねずともわかっている。
無理だ。