第46章 美女と野獣
『…泣いているのか?』
ローの隣で、大切な“彼女”が涙を流した。
一糸纏わぬ“彼女”の涙の理由が知りたくて、その涙を指で拭う。
『うん…。嬉しくて…。』
優しく尋ねてみれば、自分とひとつになれたことが、泣くほど嬉しいのだと“彼女”は言う。
『今さらなに言ってんだ…。変なヤツだな。』
自分たちが繋がったのは、いったい何度目のことと思っているのか。
『ふふ…、そうね。』
細められた金緑色の瞳から、新たな涙が流れる。
ローはそれをあやすように舌で舐めた。
『くすぐったい…。』
夢だ。
幸せすぎる微睡みの中、これは夢なのだとローは理解する。
けれど不思議だ。
自分がこんなにも愛おしいと感じる存在は、世界でたったひとりだけだというのに、彼女とこんな会話をした記憶がまるでない。
夢なのだから、自分の勝手な妄想かもしれないが、やけに現実感があるこの夢が、本当のことであるように思える。
『違うの。』
“彼女”の声が頭に響いた。
『今さらじゃなくて、今だから嬉しいの…。』
『ロー、わたしね。』
『あなたと本当にひとつになりたかった。』
どういう意味だろうかと首を捻る。
『このまま溶けて、あなたの一部になりたかった。』
『そうしたら、いつまでも一緒にいられるでしょう?』
なにを言っているんだ、バカな女め。
もし俺たちが本当にひとつになってしまったら、俺はいったい誰を愛おしめばいい。
こうして触れることも、抱きしめることもできない。
そんなことしなくても、俺たちはいつも一緒だ。
なあ、そうだろ…?
なあ、モモ。