第45章 告白、そして…
意識を手放した様子のローを見下ろし、モモは安堵のような息を吐く。
願わくば、少しでも長く眠っていてほしい。
「終わったんなら、早よう来んか。」
まるで茶番を見ていたような口調で、サカズキが声を掛けてくる。
別れの時間をくれただけ、この男にしては譲歩した方だろう。
名残惜しさを感じつつも、モモは立ち上がる。
グン…。
「……!」
立ち上がった瞬間、袖に重みを感じて驚く。
意識を失ったはずのローの手が、モモの袖をしっかりと握っている。
思わずローの顔を見つめたが、意識を取り戻した様子はない。
どうやら、無意識の行為のようだ。
痺れて感覚もないはずなのに、それでも動く彼の手。
胸が熱くて、詰まりそうになる。
でも、決めた自分が立ち止まるわけにはいかない。
奮い立たせるように、ローの手を袖から外す。
思いのほか簡単に外れた手は、力をなくしたように地面に落ちていく。
それを切ないと感じる前に、モモはローに背を向けた。
再びサカズキへと向き合ったモモは、下ろしていたメスを自分の首もとに当てる。
そんなモモを見たサカズキは、片眉を上げた。
「今回は退いちゃると言うたじゃろうが。」
「そんなの、船を退くまでわからないわ。あなたは冷徹だそうだから、わたしが船に乗った途端に、みんなを攻撃するかもしれないもの。」
そうしたら、これまでの行為はすべて水の泡だ。
だから、最後まで気を抜かない。
モモはサカズキが小さく舌打ちをしたのを見逃さなかった。
どうやら、本当に考えていたらしい。
「あと、海底火山の噴火もどうにかしてちょうだい。こんな大惨事を招いておいて、収束がつかないなんて言わせないわ。」
「……。」
サカズキは仕方なさそうにミラを見て、「鎮火せい」と命じた。
ミラは命令に頷くと、熱源を探して夜の闇に姿を消した。
彼女には、熱を鎮める能力があるようだ。
「乗らんかい。」
いつの間にか海岸には大きな軍艦が到着していた。
今まで見たことないほどの、大きな正義の船。
モモにとっては、なんの意味もない正義。
モモは自分を取り囲む兵士に指一本触れられることを許さず、自らの足で監獄となる軍艦に進んだ。