第45章 告白、そして…
それは、ずっとずっと、求めていた言葉だった。
心から求めて、欲しくて堪らなかった言葉。
なんとしてでも手に入れたかった。
彼女の1番になりたかった。
どんなに難しくても、どんなに時間が掛かろうとも。
それが今、突然与えられた。
信じられないと思う反面、彼女の真剣でどこか幸せそうな表情が、真実であることを語っている。
いつからなのか。
コハクの父親よりも、本当に自分のことが好きなのか。
尋ねたいことがいくつもあるのに、どれも口にできない。
それどころか、想像していた喜びさえも湧き上がってくれない。
モモの言葉は、まるで幻のように突然で。
むしろ、この状況が夢であってくれと願う。
最高の幸せが、夢であって欲しいだなんて。
そんなふうに思う日が来るとは、それこそ夢にも思わなかった。
どうして、こうなった…?
甘美な毒は、ローの頭さえも痺れさす。
「行くな。」
ようやく口にできた言葉は、愛を確かめるものでも、喜びを現すものでもない。
生まれて初めての、懇願。
「モモ、行くな。」
その時、笑みを絶やさないモモが初めて涙を浮かべた。
ああ、行ってしまう。
彼女は行ってしまうのだ。
自分を置いて。
夢にまで見た言葉を与えて、笑顔を残して。
そして、すべてを台無しにして、彼女は行く。
「行くなよ…、モモ…。」
どうしてお前はいつもいつも、俺の願いをきいてはくれない。
憎悪の言葉を投げつけたくとも、口から出るのは懇願ばかり。
そんなローに、モモは静かに口づけを落とした。
「…心は、置いていくわ。」
握られる手は、もはや感覚がない。
「わたしの心は、あなたの隣に置いていくから…。だからこれからも、いつも一緒ね。」
そんな戯れ言が聞きたいんじゃない。
傍にいると、本当の意味で言ってくれ。
言葉が出ない。
意識が暗くなる。
そんなローを、モモは愛おしげに見つめていた。
「…コハクを、よろしくね。」
待て、行くな。
泥に沈むような意識の中、必死に叫ぶ。
行くな、モモ。
俺の、傍に……。