第45章 告白、そして…
軍艦に乗り込むと、船の上では出航に向けて海兵たちが慌ただしく走り回っている。
モモは相変わらず誰も傍に寄せつけず、首もとにメスを当てたままデッキに佇んでいた。
完全に船が島を離れるまで、みんなの安全が確認できるまで、この場を動くつもりはない。
数メートルの距離をとって、何人かの海兵がこちらに銃を向けている。
もしモモが船から飛び降りたり、逃げ出すような素振りを見せたなら、容赦なく鉛の弾が手足を貫通するのだろう。
けれど、モモにはそのつもりはないので、いらぬ心配だ。
まもなくして船の碇が上がり、ゆっくりと動き出した。
大きな船尾が梶を切り、淡い泡の道筋ができる。
ローと、コハクと、道を分かつ瞬間だ。
地熱で海が沸騰したせいで、周囲は尋常ではない湿気を帯びている。
気持ちの悪いベタベタした風が、これからの未来を現しているようだ。
目を凝らすと、浜辺に倒れるローの姿が見える。
(……怖くはないわ。)
過去、海軍の船に二度乗ったことがある。
一度目は、先の見えない未来が不安だった。
二度目は、恐ろしい未来を知って怯えていた。
そして、三度目は……。
6年前、モモはローと別れたけれど、愛しい息子と頼りがいのある相棒。
そしてエメラルドの指輪があった。
そのどれもが傍にない。
でも、怖くはないわ。
だって、心はいつも、あなたと一緒だもの。
例えこの先、どんなに怖いことがあっても、絶望に負けたりしない。
自分がローを愛しているように、ローも自分を愛していてくれるから。
「こんなことなら、もっと早く伝えるんだったな…。」
溢れる想いは、たったあれだけの時間じゃ伝えきれない。
「好きよ、ロー。」
もうあなたの耳には、届かないかもしれないけど。
だけど伝えられずにいられない。
好きよ。
愛してる。
そして、さようなら…。