第45章 告白、そして…
変化はすぐに訪れた。
モモになにかを飲まされたローは、四肢の痺れを感じて膝をつく。
「お前…、なにを飲ませた…ッ」
手足が小刻みに震え、力がうまく入らない。
「心配しないで、ただの痺れ薬よ。即効性だけど、数時間もすれば効果も消えるわ。」
予想をしていた通りの答えが返ってきて、ローは怒りに吼える。
「ふざけるな! 今すぐ中和剤をよこせ!」
モモがこんなことをする理由。
それが嫌というほどわかるから。
「余計なマネをすんじゃねェよ。これは俺の闘いだ!」
焦る気持ちを抑えながら、ローは必死にモモを止める。
ここで止めなきゃ、取り返しのつかないことになってしまう。
けれど、モモはそんなローの気持ちを踏みにじるかのように首を横に振る。
「いいえ。これは、わたしの闘いでもあるの。だから…、ローこそ手出しは無用よ。」
そう言ってこちらを見つめる瞳は、覚悟を決めた者の眼差しだった。
彼女はもう、決めてしまった。
己の命をかけてでも、歩む道を決めてしまった。
それは、過去、ロー自身も歩んだ道。
ローが自分の命とコラソンの意志を天秤にかけて選んだように、モモも今、自分の命と仲間の命を天秤にかけて選んだ。
だけど、そんな彼女の気持ちを、わかりたくなんてない。
なぜならモモこそ、今この瞬間のローの気持ちなど、少しだって考えていないからだ。
「お前は…、どこまで俺を掻き乱せば気が済む…!」
呪うように吐き捨てたのに、モモはどこか開き直ったかのように笑みを作った。
「どこまでもよ。」
「は……。」
詫びるでも悲しむでもなく、モモは笑う。
「どこまでもわたしに、掻き乱されて。」
6年前のあの日、モモはローの前から消え去りたかった。
自分のことを忘れて、前に進んでほしかった。
でも、今回は違う。
「ねえ、ロー。さっき、あなたに伝えたいことがあるって言ったのを、覚えている?」
とてもとても、大切なこと。