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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第45章 告白、そして…




「……来ないで。」

怒りの表情でこちらに駆け寄ってくるローに向かって、モモは冷たく言い放った。

しかし、彼の歩調は緩むことがないので、モモは首もとのメスに再び力を込めなければならなかった。

チクリと痛みが走り、新しい液体が首筋に流れた。

「近づかないで。」

そこでローは足を止め、初めて悲しそうな顔を見せた。

そんな表情に、首の傷の何倍もの痛みがモモの胸を襲う。

(ごめんなさい…。)

本当は、今すぐあなたの胸に飛び込みたい。

けれど、このメスを奪われるわけにはいかないのだ。

この作戦で1番難しいのは、ローの説得。

ここで全滅するよりかは、自分が政府の手に渡る方が遥かにマシなはず。

しかし、彼はそれを認めないだろう。

モモを敵に渡すなら、戦って守り抜くことを選ぶ。
例えそこに死が待ち受けていようとも。

だけど、それじゃ困る。

ローが死んだら、わたしの世界が壊れてしまう。


「お前、どういうつもりだ…ッ」

怒りを必死に堪えるような、そんな声色でローが尋ねる。

「どうもこうもないわ。これが最善だと思うだけ。わたしの責任の取り方よ。」

「それを俺が許すと思うか。」

思わない…とモモは首を横に振り、薄く笑う。

「…なにがおかしい。」

だってほら、いつかの会話が蘇るんだもの。

あの時から、モモの身勝手さは変わっちゃいない。

でも今回は、あの時と少し違う。

あの時は、ローの前から消え去りたかった。
未来が不安で、怖かった。

けれど今は……。


「ねえ、ロー。あそこを見て。」

モモが海を指差すと、なにがあるのかと訝しみながらも、ローはそちらに目を向けた。

その隙をついて、モモは素早く数歩の距離を縮め、ローの胸ぐらを掴んで引き寄せた。

「……!?」

驚くローの唇に自分のそれを合わせ、仕込んでいた薬を口内にねじ込む。

吐き出されないように舌で押し込むと、小さな錠剤は喉の奥に消えていく。

「な…、なにを……!」

唇を離した途端、呻くように顔を歪めたローに、モモはポソリと告げた。

「ごめんね、ロー…。」

説得するつもりは、さらさらない。

いつも自分勝手で、ワガママで本当にごめんなさい。



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