第45章 告白、そして…
ポケットに手を入れたモモは、そこに忍ばせておいたものを取り出す。
銀色に光るそれは、遠目であってもサカズキにはなにであるかわかるだろう。
もちろん、ローにも。
これは元々、彼の持ち物だから。
手にしたのは、銀色のメス。
「お前…、なにを…ッ。」
しかしローには、モモがなにをしようとしているのか、わからない様子だった。
それはサカズキも同じのようで。
「おもしろい。それでわしを倒そうとでも思うとるんか。」
「思ってないわ。」
メスだろうと、大剣だろうと、モモにサカズキを倒すことは不可能だ。
だから素直に首を横に振った。
「ならば、どないしよると?」
「わからない? なら、教えてあげるわ。」
政府に追われて、うんざりだった。
いいことなんかひとつもないし、いつも怯えてばっかり。
でも、今日だけは、良かったって思う。
だってわたしは、あなたたちにとって大切なんでしょう?
だから、困ることをしてあげる。
ローを守れるくらいに、困ること。
「これは…、こうするのよ…!」
鋭いメスを、自分の首に突きつけた。
「「……!!」」
ローとサカズキ、2人の表情が同時に凍りつく。
「わたしの命が惜しければ、わたしの言うことをききなさい!」
これは、賭けだった。
政府にとって、どれだけ自分が重要なのか計りきれない。
ローやルフィたちと自分を天秤にかけて、もしかしたら負けるかもしれない。
でも“S級”というランクが、モモに勇気をくれる。
きっとわたしは、ローたちを守れるくらい、価値が高いんだって。
でもそれには、代償も必要だ。
海軍を甘く見ていたから、こんな事態になった。
だからもう、甘く見たりしない。
わたしの持つすべてで、ローを守ろう。
「この島にいる海賊に、手を出さないで!」
メスを持つ手に知らずと力が入る。
鋭い先端が皮膚を破り、温かい液体が首を濡らす。
「やめろ!」とローが叫ぶが、モモの視線はサカズキに向いたまま。
これは、取り引きだ。
「手を出さないと誓うなら、わたしはあなたの船に乗りましょう。」
代償は、わたしの命。