第45章 告白、そして…
サカズキがなにをしたのか、一瞬モモにはわからなかった。
しかし、ミラが後方に吹っ飛び、口から血を流しているのを見て、彼女が殴られたのだと理解する。
(女性の顔を殴るなんて…!)
街にマグマを降らせる男だ。
そのくらいの暴挙、なんでもないのだろうが、モモはサカズキに対して憎悪にも似た感情を抱く。
「ほんにお前は使えん人形じゃ…!」
ミラのことを“人形”と称したサカズキは、それっきりミラに言葉をかけず、今度こそモモへと視線を向ける。
「金緑の瞳…。なるほど、確かにお前はセイレーンじゃのぉ。」
「わかってくれたのなら、それでいいわ。」
サカズキに沸々と怒りを感じていたけれど、今はそれを表に出さず、モモはできるだけ冷静になるよう努めた。
むしろ、冷静さを欠いているのは、サカズキの足下にいるローである。
「モモ…ッ! てめェ、なんで来た…!」
その声には、ひどい怒気が混じっていた。
その理由は十分にわかっている。
だから、モモはその問いに答えなかった。
「てめェ…ッ、聞いてんのか!」
ローの様子を見て、サカズキはモモこそがローが匿っているセイレーンなのだと判断する。
「利口な選択じゃのう、セイレーン。お前が素直に出てきた方が、わしらも手間が省けるわい。」
知ったことか、手間なんて。
「あなたは言葉が通じないのね。わたしは、足をどけろと言ったのよ。」
サカズキの足は未だローの身体の上。
「ついでに、その拳も下げなさい。」
今にも振り下ろされそうな真っ赤な拳。
それが原因で、今この島が大変な状況になっているのだとモモにもわかる。
「笑えん冗談を言う。わしがお前の言うことをきくと思っとるんか。お前が出頭しようと、こやつら海賊の死は変わりゃあせん。」
笑えないと言いつつ、サカズキの口もとはモモをバカにするように笑みを作っている。
だからモモも、笑ってやった。
こんな男に、負けないように。
「いいえ。あなたはわたしの言うことをきくのよ!」
覚悟を決めた女を、侮らないで。