第45章 告白、そして…
気の遠くなるほどの激痛の中、ローはゴミ屑を見るような目つきで見下ろすサカズキを睨みつける。
顔に残る古傷は、いったい誰につけられたものだろう。
自分はというと、致命傷どころか かすり傷ひとつ負わせていない。
ヴェルゴよりも、トレーボルよりも。
…ドフラミンゴよりも遥かに強い。
(これが、海軍元帥か…。)
自分は、身の程というものを知っているつもりでいた。
もちろん、己を最強などとは思ってもいない。
だからこそドフラミンゴは策略に嵌めて、四皇であるカイドウに倒させようとした。
結果としてドフラミンゴを倒すことができたものの、それはほとんどルフィの力。
ドフラミンゴを討つと決断してから仲間たちと別れたのは、この作戦が終わる時、自分は無事に戻れないと予感していたから。
おそらく、死ぬだろうと思っていたから。
ルフィと再会し、コラソンの意志を貫き。
そして、生き残った。
でもそれは、自分はただ、運が良かっただけだ。
無事に戻った以上、仲間が増えた以上、なにがなんでもこの海で勝ち抜き、生き残ってやる。
そう、決めたのに。
それなのに、どうして…。
なぜ自分は、こんな強敵にたったひとりで挑んでしまったのか。
ああ、そうだな。
モモ、お前のせいだよ。
どんな強敵を前にしても、彼女が関わると、どうしても冷静でいられない。
無謀だとわかっていても、命ですら投げ出してしまう。
まったく、自分らしくない。
まさか自分の最後が、女ひとりを守るためになると、誰が想像できようか。
それでも、後悔はない。
彼女が逃げのびてくれれば、それでいい。
願わくば、この瞬間にもモモと仲間が、島を脱出できているように。
「トラファルガー、お前はここで死ね。」
サカズキの太い腕が、再び赤いマグマへと変わる。
最後まで誇りだけは捨てまいと、強く強く睨む。
質量を増した腕が振り下ろされる。
その瞬間……。
「待ちなさい……ッ!」
心臓が、大きく跳ねた。
それは、ローが1番聞きたくて。
そして、1番聞きたくなかった声。
どうして…。
どうして、お前がここにいる。
逃げていてほしいと。
今この時にでも、脱出していてほしいと。
「モモ……ッ」