第45章 告白、そして…
どこかで新たな爆発が起きたのだろうか。
空気を震わすほどの地鳴りが響く。
海の水面は激しく揺れ動くけど、モモの心は凪いだように穏やかだ。
もし隣にローがいたのなら、彼の背中で怯えていただろうか。
でも、今ここにローはいない。
最も危険な場所で戦っている。
だから、わたしも…──。
「選べることは、贅沢だわ。」
運命って、突然訪れる。
道を選ぶヒマなんかなくて、ただ目の前の道を走るだけ。
セイレーンであること。
ローを好きになったこと。
どう足掻いても、変えられないことはある。
でも、今回は違うでしょう?
わたしにも、やれることがあるの。
選べる道があるの。
ポケットの中に入れたメスを、服の上から握りしめた。
「きゅきゅぅ…?」
そんなモモを、ヒスイが不安げに見つめてくる。
「ねえ、ヒスイ。わたしはいつも行動が…決断が遅かったわね。」
セイレーンだって言えなかった。
あなたを好きと、言えなかった。
いつもいつも、あとになって気がつくの。
あの時、ああしていれば良かったって。
後悔とは、あとに悔やむこと。
これ以上、悔やみたくないから、わたしは選ぶ。
肩に乗ったヒスイを下ろした。
もう一度乗ろうとするヒスイに、モモは首を横に振る。
「ついてきちゃ、ダメよ。」
「きゅ…。」
ありがとう、ヒスイ。
今まで一緒にいてくれて。
いつだって、あなただけは一緒だった。
でも、これからは…。
「ヒスイ、コハクをよろしくね。」
ありがとう。
ありがとう。
さようなら。
船が動いた。
フランキーが安全な場所へと移動させようとしているのだろう。
ゆっくりと動く海賊船から、モモはひらりと飛び降りる。
ヒスイはついてこなかった。
だからモモも、振り向かずに進む。