第45章 告白、そして…
外に出た途端、熱風がモモの頬を撫でた。
ただでさえ暑い夏島の気候に加え、地下から湧き出る溶岩の熱気と合わさって、島全体がとんでもない暑さになっている。
火災はどんどん広がっていくし、早くしないと甚大な被害が出てしまう。
「きゅい!」
ヒスイが軽快に飛び跳ね、肩に乗ってきた。
目を合わせれば、「どこへ行くの?」と問いかけてくる。
モモはその緑色の身体にそっと触れ、穏やかな気持ちで語りかける。
「ヒスイ、わたしとあなたが…初めて会った日のことを覚えている?」
「きゅ…?」
ヒスイは不思議そうに首を傾げたが、忘れるはずがないと強く返事をした。
ヒスイは、とある島の菜園で、そこの主から譲り受けた種から生まれた。
主である男は食虫植物の種だと言っていたが、それがヒスイのことを指していたのかは、今ではわからない。
「あの時、あなたったら、こっそり船内をうろついていたんだもの。驚いたわ。」
食料はなくなるし、鉢植えは空になるし、不思議なことばかり起こるので、船内は軽く騒動になった。
「最初から出てきてくれれば良かったのに。」
「きゅきゅぅ。」
ヒスイは照れたように顔を掻く。
「あれから何年経ったかしら…。」
コハクを授かる前。
エースやホーキンスと出会うよりも前。
「あの日から、あなたはわたしの、相棒だったわ。」
「きゅい!」
非力なモモを、助けてくれた。
船を下りる時も、ついてきてくれた。
いつも、一緒だった。
いつも、守ってくれた。
「ヒスイ、ありがとう。」
突然お礼を言われたヒスイは、なぜそんなことを言うのだろうと、きょとんとしていた。
「ねえ、ヒスイ。」
モモはヒスイをしっかりと見つめた。
「でも、あなたは…、もうわたしだけの相棒じゃないわね。」
時は流れるのだ。
あの時、ヒスイにとっての1番は確かにモモであったけど、今はきっと、もう違う。
「ヒスイ、あなたの相棒はコハクよ。」
そうやって、ゆっくり変わっていけばいい。