第45章 告白、そして…
見くびっていた。
サカズキの強さも、冷酷さも。
そしてどこか、甘く見ていた。
彼らに見つかっても、ローが、みんながいるから大丈夫だと。
その確証もない自信が、ガラガラと音を立てながら崩れ落ちていく。
ロー。
ロー…ッ!
不安が一気に胸を占めた。
身体が小刻みに震える。
このまま、彼が帰ってこなかったら。
そう考えるだけで、潰れそうに胸が痛い。
(いいえ。そんなことは…させない。)
だって、わたしは決めたから。
これ以上、大切な人を誰ひとり失いたくない。
絶対に、あなたを死なせたりしない。
今度こそ、わたしが…。
「わたしが、守る…!」
どんなに酒に酔おうとも、あの日、あの夜に誓った覚悟は、絶対に忘れやしない。
決めた瞬間、胸の痛みも、身体の震えも止まった。
鳴り止まぬ地響き。
広がりゆく炎。
振動を受けて船はぐらぐら揺れるけど、モモは転びもせずに歩いていく。
「ねえちゃん、ここに船を停めとくわけにゃァいかねぇ。移動させるぞ…──」
碇を上げたフランキーが振り返った時、そこにモモの姿はなく、忽然と消えていた。
サウザントサニー号を離れたモモは、愛する潜水艦の上にいた。
船内に入ったモモは、とある部屋へと足を向ける。
その部屋はこの船で1番、神聖な場所。
ドアを開けて中に入ると、空気はピンと張り詰め、モモの好きな消毒液の匂いが漂う。
ここは命を救う場所。
ローの、オペ室。
清潔に保たれたオペ室には、手術に使うための専門器具がきっちりと並べられている。
モモは銀色に輝く器具のひとつ、オペの象徴ともいえる器具…メスを手に取った。
「……力を貸してね。」
船の揺れに合わせて、手術器具がカタカタと音を鳴らす。
まるで頑張れって、後押ししてくれているみたいに。