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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第10章 覚醒




こんなときに、こんな状況で、自分の気持ちに気づいてしまった。

ずっと心に刺さる痛みは、恋の痛み。

ぐちゃぐちゃになった心は、嫉妬心。


気がついてしまえば、こんなにあっさり答えが出る。


答えは出るのに、このままだと二度と伝えられないかもしれない。

彼は今、自分のために殺されかけている。


(そんなの、絶対ダメ…!)

助けないと! と思うけど、非力な自分になにが出来るのだろう。

(ローを助ける方法…。)

モモにあるのは、歌の力だけ。


(そうよ、歌…。歌を唄えばいいんだわ。)

けど、なにを…?

モモに歌える唄は、そうない。

癒やしの歌、慈しみの歌は、今ここで唄っても意味がない。

眠りの歌は?

この場の全員を眠らせられれば、ローを救えるかもしれない。

でも、この状況で、気持ちを乗せられるだろうか。
眠りの歌は、子守歌のようなもの。
慈愛の気持ちがなければ唄えない。

今の自分の心は、アイフリードへの憎しみや悲しみで真っ黒だ。

こんな心では、到底唄えない。


では、滅びの歌は…?


絶対に、唄ってはいけないと言われた歌。

なにが起きるかは知らない。

けど、唄えばローを助けられる。


(唄うしか、ない!)


憎しみなら、今、心の中にたくさんある!


いざ唄おうと息を吸い込んだとき、『待って!』と誰かが止めた。


止めたのは、誰でもないモモ自身。


唄っていいの?
ほんとうに?

そんな歌を唄って、誰が喜ぶの…?


最悪、歌で誰かを殺すことになる。

まず、両親は悲しむだろう。

それから、ローも喜ばないと思う。


(なにがいけないの。アイフリードはお母さんとお父さんの敵だわ。彼が死ぬことになっても、仕方ないじゃない。)


けれどもし、アイフリードが死ねば、メルディアが悲しむ。

(メルは、わたしを騙してたわ。)

それでも、今でもモモを友達と呼んでくれる。


それになにより、誰かを殺す歌なんかを唄えば、自分は一生、歌が嫌いになると思う。




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