第45章 告白、そして…
「ゲホッ、ゴホ…ッ」
ローは激しく咳き込みながら、サカズキを睨み上げた。
「誰が…教えるか。アイツは、俺のものだ…!」
海軍にも、政府にも、誰にも渡さない。
モモは、自分だけのもの。
「言いたくなけりゃァ、言わんでもいいわぃ。お前らの船を潰しゃあ、おのずと見つかるじゃろう。」
「…そう簡単に、潰せると思うなよ。」
幸か不幸か、今 自分たちは麦わらの一味と行動を共にしている。
サカズキに太刀打ちできなくとも、撤退に必要な戦力ぐらいは揃っているのだ。
でもできれば、この瞬間にも出航していることを願う。
そんなローの心中を察してか、サカズキはなにかに気づいたように眉根を寄せた。
「む…、そういうことか。お前がひとりでわしらのとこに来たんは、そういう目論見があってかぃ。」
「チ…ッ」
時間を稼いで仲間を逃がす。
そのことを気づかれたと悟ったローは、忌々しく舌打ちをした。
海兵たちを向かわされては厄介だと懸念したが、意外にもサカズキは部下にそんな指示を出す様子がない。
(諦めた…わけじゃねェよな。)
いっこうに焦る気配がないことを不審に思う。
するとサカズキは、一度ローから視線を外し、靴の裏で地面を少し蹴り削った。
「……?」
なにをするつもりかわからず、周囲の海兵たちの顔色を窺うが、避難して遠巻きにこちらを見ていた彼らも、サカズキの意図がわからないようだった。
サカズキとクザンは両極端。
クザンが甘いというならば、サカズキはやりすぎで常軌を逸している。
ふと、七武海であった時に、そんな噂を耳にしたことを思い出した。
やりすぎというのは、例えば、どんな…。
「セイレーンは、逃がすわけにゃァいかん。」
サカズキはおもむろに拳を上げる。
するとその腕は通常の何倍にも膨れ上がり、高熱のマグマの拳へと変化する。
(オイ…、まさか…、冗談だろ…?)
ようやくサカズキのやろうとしていることに気がつき、血の気が引く。
そんなことをしたら、モモや自分たちだけじゃなくて…。
鋼鉄をも溶かすマグマの拳を、サカズキは勢いよく振り下ろす。
「オイ…ッ、やめろ…!」
“大噴火”
マグマの正拳突きは、地面を貫き、地中深くへと飲み込まれていく。
大地が、揺れた。