第45章 告白、そして…
長刀の切っ先をサカズキに向け、今にも飛びかかりそうなローに、周りを取り囲んでいた海兵たちは一斉に銃を構える。
しかし、サカズキは部下たちに視線を投げて行動を制す。
「黙らんかぃ、海賊風情が…。お前に正義の在り方など、わかるはずもない。」
正義。
サカズキは己の正義の貫くためだけに、この海に生きていると言っても過言ではない。
前任元帥のセンゴクや、元帥候補であったクザン。
彼らのように、甘さを残した者になど、本当の正義を貫けやしない。
正義を貫くには、この海にはびこる悪を殲滅するには、多少の犠牲も払わねばならないのだ。
例えば、オハラの島民たち。
例えば、セイレーンの娘。
すべての命は、正義のために死に、正義のために生きろ。
「まったく…、反吐がでる。お前ら政府の人間にはな。」
人の命を簡単に切り捨てるサカズキに、ローは故郷の街を思い出す。
必要な時には美しく飾り立てておいて、不要になったら跡形もなく消し去る。
政府のやり方はいつも同じで、虫唾が走った。
「てめェらみたいな汚い連中に、アイツは死んでも協力しないだろうな…。」
もし、モモを仲間にしようと考えているならば、とんだお門違いだと吐き捨てる。
彼女はひ弱な女だが、信念だけは鉄よりも固い。
そんな強さに、ローは惹かれたのだ。
だからさっさと諦めて消えろ。
そんな思いで告げたのに、サカズキはローをバカにしたように息を吐く。
「協力? そんなもん、必要あるかぃ。」
「なんだと…?」
協力なくして、どうやってモモの能力を使うというのか。
するとサカズキは、当たり前のように言ってのける。
「お前のところにおるセイレーンは、母体にしよるに決まっとるじゃろ。数が揃わにゃァ、兵器にならん。」
は……?
なん、だと…?
この男、今、なんと言った。
母体?
兵器?
“セイレーンの能力は女にしか受け継がれないんだ”
コハクはそう言っていた。
モモの産んだ子供が娘なら、能力が宿るのだと。
つまり、サカズキは、彼女を…──。
「……てめェ…ッ!」
理解した瞬間、怒りが爆発して目の前が真っ赤に染まる。
気づけば実力差も人数差も忘れ、刀を握りしめて大地を蹴っていた。