第45章 告白、そして…
「さぁ、こっちへ来い。」
「…近づかないで!」
モモが何者なのかもわからないのに、セイレーンであることだけで連行しようとする海兵に、鋭い声を上げて反発した。
「おとなしくしていれば、乱暴なマネはしない。ケガの手当てもしてやる。」
「結構よ!」
そうして連れて行かれたら、二度と自由はないんでしょう?
彼らの手口は、すでに経験済みだ。
「わからない女だ。…おとなしく言うことを聞かないのなら、多少手荒になってしまうと言っているんだ。」
ただの一般人である可能性もあるのに、なんという言い方だろうか。
これだから、政府の人間は嫌い。
「どんなに乱暴にされたって、あなたたちについてなんていかないわ!」
「そうか…。ならば仕方ない、無理にでもついて来てもらおう。」
海兵たちがバラリと広がり、陣形を組む。
後ろにまで回り込まれ、あっという間に逃げ道がなくなった。
そのまま徐々に距離を詰められ、どんどん追いつめられていく。
「さぁ、来い…。」
「やめて、触らな…--」
「人の女に、馴れ馴れしく触んじゃねェ。」
突如割り込んだ声に、胸が熱くなり涙が出そうになった。
どうしてあなたはいつも、わたしが心で呼ぶと駆けつけてくれるんだろう。
“ROOM”
見慣れた薄いサークル状の膜が、モモと海兵を包み込む。
「な、なんだ…?」
状況を飲み込めない海兵たちがサークルを見上げ、警戒を強める。
でも、警戒したってもう遅い。
ここはすでに、彼の手術室なんだから。
“アンピュテート”
目に見えぬ太刀筋が海兵を襲い、身体が無惨にもバラバラになっていく。
「うわァ…! か、身体が…ッ」
頭部や胴体、いくつにも身体が分裂しているのに、血は一滴も出ないし、痛みもない。
切り離された身体がワタワタと動く様は、いつ見ても気味が悪い。
「ロー…ッ」
安堵で半泣きの状態になりながら、モモは彼の名を呼んだ。
「お前は…ッ、いつもいつも危険なことばっかしやがって。いっそのこと首輪でも付けてやろうか。」
口では悪態付きながら、駆け寄ってきたモモを受け止める腕は、とてつもなく優しい。
「……無事だな?」
「うん…!」
泥だらけで傷だらけだけど、こうしてまた会えたのだから、無事以外なんでもない。