第45章 告白、そして…
追っ手から逃れることができたモモは、少しだけ冷静を取り戻し、空に浮かぶ月を見上げた。
「月があそこにあるってことは、北はあっちかしら。」
確か、自分たちの船は北の海岸に停めたはず。
船番として誰かが残っているだろうし、宿を目指すよりもそちらに向かった方がいい気がしてきた。
走りやすいように、スカートの裾を破ってスリットを作る。
とんでもなく恥ずかしい格好だが、こんな時に気にしていられなかった。
いつの間にか小さな靴は脱げ、素肌を晒した足の裏に尖った小枝がチクチク刺さる。
「…もう少しの…辛抱よ。」
みんなに会えれば、大丈夫。
海軍なんか退けて、またいつもみたいに海へ出られるから。
北を目指して走り続けると、だんだんと木々の数が少なくなり、踏みしめる土の質も変化してきた。
大きく息を吸い込むと、僅かに潮の香り。
海が近い。
ということは、船まであと少し。
やっと希望がさしてきた。
ようやく緊張が緩みかけた瞬間、目の前の茂みから複数の人影が現れた。
「……!」
驚いて足を止めると、あちらも驚いた様子で動きが止まる。
現れたのは、海兵だった。
「なんだ…、お前は。」
異様な服装に不審な目を向けられた。
すると、ひとりの海兵が「おい…」と声を上げる。
「見ろ、瞳の色が金緑だ。この女、セイレーンだぞ。」
しまった…と思った時には、すでに遅い。
せっかく姿形が変わったのに、すぐに正体を明かしてしまった。
「どういうことだ…。ミラのヤツが追っていたセイレーンは子供だったはず。」
ミラというのは、モモを追いかけてきた彼女のことだろう。
しかし今は彼女の名前よりも、この状態をどうにかしなければならない。
「セイレーンは2人いたってことか? どちらにしても、元帥がお喜びになる。」
複数人の海兵がにじり寄る。
船を目前にしながら、どうしようもなくて拳を握りしめる。