第45章 告白、そして…
決死の作戦も易々と切り抜けられてしまい、モモは他に策がないものかと必死に考える。
諦めてはいけないと思う反面、もうダメなのではないかという焦燥感が強くなる。
鍛えられた海兵を出し抜くような力が、自分にはないから。
(いいえ、…あるわ。)
ひとつだけ。
モモには歌という力がある。
けれど、相手は自らに刃を立ててでも任務を全うしようとする海兵。
中途半端な歌じゃ、簡単に打破されてしまう。
それこそ、彼女を傷つけるつもりでいかなきゃ。
(でも…。)
誰かを傷つけるような歌なんて、唄いたくない。
歌は心を癒すもの。
そんな目的のために唄ってはいけないのだ。
(じゃあ、どうすれば…ッ)
女が一歩一歩近づいてくる。
距離が縮まるにつれ、モモの未来が削りとられていくように感じた。
「もう、おとなしくして…。」
くたくたの身体に、女の腕が伸ばされる。
(もう、ダメ…ッ)
ビキリ…ッ!
骨が軋むような痛みに目眩がした。
いったいなにが起きたのか理解する前に、膝から崩れ落ちる。
途端に奇妙な感覚に陥った。
急速に骨が伸びるような、身体が膨れ上がるような、そんな感覚。
「……!?」
目の前の女が驚き、思わず手を引っ込める。
「あ…、うぅ…ッ」
呻きながら地面に爪を立てると、急に衣服がキツくなり、胸元のボタンがブチブチと弾け飛ぶ。
(まさか、この感覚は…。)
自分の身になにが起こったか理解した時には、すでに身体に急激な変化が訪れ、めきめきと手足が伸びていった。
(秘薬の効果が…切れた…!)
あっという間に本来の姿を取り戻し、それと同時にしばらく続いていた身体の痛みも、きれいさっぱりなくなった。
(こんな時に戻っても…!)
どうにもならないと思って女を見上げると、表情の乏しい彼女が見てわかるほど困惑していた。
「……こ、ども?」
なぜだか迷う素振りを見せる彼女は隙だらけだ。
これを逃す手はない。
大人の身に戻ったモモは、格段にアップした筋力を使って、再びその場から逃げ出す。
少し走ったところで振り返ると、どうしたことか、彼女は立ち止まったまま追ってくることはなかった。