第45章 告白、そして…
追っ手から逃げ続けていたモモは、鋭く走る身体の痛みに顔をしかめ、足を止めた。
「ハァ、ハァ…、うぅ…ッ」
全身泥だらけの傷だらけ。
限界はとうに訪れ、疲労困憊となっていた。
(あとどのくらい走れば、みんなのところへたどり着くの…?)
真っ暗闇に包まれた夜の森からは、虫の声と獣たちの気配しかしない。
街からどんどん遠ざかっている気がして、モモは不安になる。
(他の海兵に見つからないうちに、みんなに知らせなくちゃいけないのに!)
滝のように流れる汗を拭い、再び走り出そうとした時だった。
なんとなく気配を感じ、後ろを振り向く。
ザザ…ッ
その攻撃を避けられたのは、奇跡に近かった。
疲れと痛みで膝が笑い、カクリとバランスを崩したから、たまたま避けられた。
本当にそれだけ。
攻撃が鼻先を掠め、チッと音が鳴る。
勢い余ってモモの数歩先に足をついたのは、黒装束の女。
ついさっき、足止めをしたはずの彼女だ。
(そんな、どうして…!?)
いくらなんでも動けるようになるのが早すぎる。
正攻法ではないとはいえ、意識を正常にするにはもっと時間が掛かるはずだ。
あっという間に追いつき、俊敏な動きを見せた彼女を驚愕な気持ちで見つめていると、片腕から血を滴らせていることに気がついた。
(まさか…、自分で…?)
意識を取り戻すために、自ら剣で腕を傷つけたというのか。
「どうして、そこまで…。」
眉ひとつ動かさずに自傷行為をする彼女に、尋ねずにはいられなかった。
呆然としたモモの問いに、彼女は律儀に答える。
「…サカズキさまの、ご命令だから。」
命令だから、自身を傷つけることも厭わないというのか。
手段を選ばない方法に、恐怖とは別に、僅かな怒りすら感じた。