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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第45章 告白、そして…




地面にお尻をつけたまま、ゆっくりと後ずさった。

たかが子供に逃げられるなんて思っていないのだろう、女は急いだ様子もなく、こちらへ歩いてくる。

手に瑞々しい草の感触が当たった。

焦りながらも、その感触だけを頼りに、モモは目的の植物を正確に引き抜いた。

そして、転がるようにして、川べりに引っかかっている灯籠のもとへと走る。

「……?」

なにをするつもりなのか、と女が首を傾げた。

乾燥もしていない取ったばかりの薬草。
効力が発揮するかは未確定。

でも、迷っている暇などない。

モモは灯籠の蓋を開けると、摘み取った薬草を放り込んだ。

灯籠の中の火が、詰め込まれた薬草をジリジリと焦がす。

「……なにをしてるの?」

モモの行動が理解できないのか、女が尋ねてくる。

だけど、それに答えてあげるほど、モモは馬鹿じゃない。


(まだ、まだよ…。)

しだいに縮まる距離に鼓動が早まる。

けれど焦ってはいけない。
せっかく思いついた作戦も、台無しになりかねないから。

ドクン、ドクン…。

女の声も、川のせせらぎも聞こえない。
聞こえるのは、己の心音だけ。

わたしに戦う力があれば、自分の窮地くらい、どうにかできるのに。

対峙している女は、おそらくモモより年下。
武力があれば、こんなふうに怯えずにすんだ。

(早く、もっと早く燃えて…ッ)

ちろちろと燃えていた火は、モモの願いを叶えるように薬草を飲み込んでいく。

女との距離は、もう幾ばくもない。


(今だわ…!)

モモは大きく振りかぶって、灯籠を彼女へと向かってぶん投げる。

ガラス製の灯籠。
そんな危ないものを女性に投げつけるなんて、普段なら絶対にしない。

でも、今回ばかりはそうも言ってられない。

(捕まるわけに、いかないんだから!)



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