第44章 剣と秘薬
地面にうずくまる無様な格好から、モモはグッと力を入れて立ち上がる。
ズキ…!
今度は肘のあたりが痛み、顔をしかめた。
転んだ際に打ちつけてしまったのだろうか。
「……ああ、ひどい格好。」
川の付近であることもあって、土は湿気を含んでいた。
足や服にべっとりとへばりついた泥を払う。
「…あれ、ここ…どこかしら。」
ぼんやりと歩いていたために、道がよくわからなくなってしまった。
きょろきょろと辺りを見回すが、目印になるものなどない。
ああ、しまった。
迷子だ…。
「んー…、でも、このまま川沿いに下っていけば、海に出るわよね。」
川は海へと繋がっているはずなのだから。
海へ出たら、ぐるりと回って街に出ればいい。
そうと決まれば急がなくては。
遅くなるとみんなが心配してしまう。
短い歩幅でモモは先を急ぐ。
ズキン…!
「……ッ」
再び膝が痛み、ガクリとバランスを崩しそうになる。
身近な樹木に手をついて、痛んだ膝をさする。
さっきからどうしたというのだろう。
膝や肘の骨…というか関節が突発的に痛む。
「…って、まさか!」
思い当たる理由など、ただひとつ。
(身体が…もとに戻ろうとしてる!?)
そういえば、秘薬を飲んで身体が縮んでしまった時も、こんなような痛みが走った。
「マ、マズイわ…!」
なにがマズイって、今もとの身体に戻ったら、服装がえらいことになる。
丈の長いワンピースを着ているが、それにしたって つんつるてんどころじゃない。
そんな格好で街中を歩くことになれば…。
(恥ずかしくて、死ねる…!)
公衆の面前で醜態を晒すことを想像し、冷や汗がだらだらと流れて背筋をつたう。
「と、とにかく! 早くみんなのところへ戻らなくちゃ!」
ズキズキと痛み続ける身体に鞭打って、モモは駆け出した。