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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第44章 剣と秘薬




来た時とは異なるなだらかな山道を、モモはゆっくり歩んだ。

歩きながら、ぼんやりと考える。

この6年で、自分は強くなったと思っていた。

でも、違う。
ただ、狡くなっただけだ。

卑怯になっただけ。

1番守りたいものは、愛する人であったはずなのに、モモが守っていたものは、自分自身だった。

自分の醜い部分を暴かれて、泣き喚きたかった。
でも、泣いていいのはモモではない。


ズキン!

「……ッ」

ふいに膝が痛み、転んだ。

ナミが買ってきてくれた真新しい服が、土で汚れる。

起き上がるのが億劫で、そのまま地面にうずくまった。

「……。」


『モモ、もういい加減、自分を許してやれよ…!』


コハクに放たれた言葉が、繰り返し頭に響いている。

(……やり直せるかな、わたし。)

まだ、戻れるだろうか。

自分を許せば、戻れるのだろうか。

ひたすらに幸せだった、あの頃の自分に。


(違う、戻らなくちゃいけない…。)

どうしたって過去は取り戻せない。
でも、やり直すことはできる。

ごめんなさい。
ごめんなさい。

何度謝っても足りないけれど。

傷つけてごめんなさい。
逃げてばかりでごめんなさい。

遅くなって、ごめんなさい。

許せなかったことを、どうか許してほしい。


何度も差し伸ばされた温かい手。

間に合わなかったものもあるけれど、たった今、差し伸べてくれている人もいる。

まだ、遅くない?
まだ、家族になれる?

熱いものが込み上げてきて、必死に唇を噛んだ。

ギリリと地面に爪を立て、拳を握る。


ごめんね、コハク。

ごめんね、ロー。

差し伸ばされたその手を、ちゃんも掴むから。

掴むことができたなら、しっかり握りしめよう。

離さないように。

離れないように…。



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