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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第44章 剣と秘薬




「コハク…ッ、本当にエースは友達なのよ!」

変に勘違いされては、コハクにもエースにも申し訳ない。

モモは信じてもらおうと必死に訴える。

しかし、意外にもコハクはあっさりと頷く。

「うん、わかった。」

「……わかったの?」

その引き際のよさに、逆にモモが疑ってしまう。

「うん。オレ、母さんの嘘は見抜けるし。」

自分ではどう思っているか知らないが、モモは嘘がヘタだ。

「それに……。」

「それに?」

「ん…、いや。なんでもない。」

それにたぶん、エースは違うと思っていた。

どこが違うと聞かれたら答えられないが、彼に父親を感じたことはなかったのだ。

父親に、なってほしいとも思わなかった。

エースとローの、いったいなにが違うのだろう。

(エースの方が優しいし、性格もいいんだけどなぁ。)

それでも、コハクが父親になってほしかったのはローだ。

どうしてと聞かれても、コハク自身 首を傾げるしかない。


「でも、なんで急にそんなこと聞くの?」

「ん、一応確認しておこうと思ってさ。」

違うと思っていたけど、一応。

なぜ今さらなのかといえば。

(たぶん、ローはエースがオレの父さんだと思ってる気がする。)

「けど、オレが否定するのも違うと思うんだよなぁ…。」

「え、なに? なんのこと?」

「…こっちの話。」


山の麓に、山頂から流れる川が見えてきた。

昨日は剣を求めて山を登った。

結局、自分には資格がなかったのか、手に入らなかったけど。

(武器としての剣は、手に入らなかった。)

でも…。

剣を突き立てなくちゃいけないのは、なにも敵だけではない。


「母さん。オレ…、母さんに幸せになってほしい。」

「なに言ってるの? わたしは十分幸せよ?」

予想通りのモモの言葉に、コハクは軽く笑った。

(そうとは思えないんだよ。)

突き立てなくちゃいけない剣は、すでに持っている。



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