第44章 剣と秘薬
派手な色彩のもの。
異国風のデザインのもの。
たくさんの商品の中で、ひとつの灯籠にモモの目が止まった。
「あ、これ…。」
そのシンプルなデザインの灯籠を手に取る。
丈夫な和紙でできていて、隅に小さなピンク色の花が描かれていた。
この花には、見覚えがある。
「お目が高いね、お嬢ちゃん。それはワノ国から入ってきた珍しい灯籠だよ。海に流しちまうにはちと惜しいが、美しいだろう。」
やはり、ワノ国のものだったか。
想像通りの言葉に、モモは苦い笑みを作る。
「その花、なんていったかな。なんでも、ワノ国が誇る花らしいんだが…。」
「……桜よ。」
思い出せそうにない店主に、モモは正解を教えてあげた。
「なんだい、お嬢ちゃん詳しいな。」
「昔、同じ花のカップを持っていたの。…割ってしまったけど。」
大切な友達が、アラバスタ王国で買ってきてくれたカップ。
割れたカップと同じように、彼はもう二度と戻ってこない。
「…それにしたら?」
気落ちした雰囲気を察して、コハクが声を掛けてくる。
「ん、でも…。」
ワノ国の商品は貴重だ。
他の灯籠と比べて値段がずば抜けて高い。
店主が言うように、灯籠は海に流してしまうもの。
ローのお金をそんなに使うことは憚られる。
(でも…。)
灯籠流しの意味を、モモは知っていた。
だから、今回だけは…特別。
「これにするわ。」
「…そう。じゃあ、オレはこれ。」
コハクは手近にあった灯籠を手に取り、桜の灯籠と一緒に店主のもとへ持って行った。
「毎度あり。楽しんでいっておくれ。」
灯りをつける道具をもらって、2人は店を出た。
「そういえば、どこから灯籠を流すのかしら。」
川から流すと聞いていたが、街の地理に疎いモモには川がどこにあるかわからない。
「それなら、昨日山に行った時に見たよ。大きい川だったし、たぶんそこだと思う。」
「じゃあ、案内してくれる?」
街の人に尋ねてもよかったが、せっかく時間もあることだし、コハクに任せることにした。