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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第44章 剣と秘薬




喫茶店を出た2人は、夕方にある灯籠流しに参加するため、祭りで使う灯籠を探し始めた。

イベント事は稼ぎ時だ。
どの店でも、それぞれデザインの違う灯籠を店先に飾って宣伝している。

「どれも可愛いわね。目移りしちゃう。」

「どうせ海に流しちゃうんだろ? どれでもいいんじゃねぇの。」

テンションが上がるモモとは対照的に、コハクはなんとも冷めた意見を言ってくれる。

「気持ちの問題なのよ。参加するからには、自分の気に入った灯籠を使いたいじゃない。」

「ふーん、そういうもん?」

こういう、物にこだわらないところは、どっかの誰かさんにそっくりである。


「母さん、決めるなら早くしないと、あっという間に日が暮れちまうよ。」

女の買い物が長いのは、全国共通なのだろうか。
回った店の数が何軒目かは、もう数えていない。

「そうよね。待って、えっと…。」

足を止めたのはアンティークショップの前。
国外のものも多く取り揃えているようで、変わったデザインも多い。

「ここで買うわ。入ってもいい?」

「どーぞ。」

格子の入ったガラス戸を開けると、カランカランとどこか懐かしいベルの音が響く。

「いらっしゃい、これは可愛いお客さんだ。」

店の奥で、白いヒゲをはやした店主が顔を上げた。

「こんにちは。灯籠を買いに来たんですけど。」

「ああ…、それなら窓際に置いてあるよ。ゆっくり見ておいき。」

「ありがとうございます。」

教えてもらったとおり、窓際の棚に近寄ると、色とりどり、様々なデザインの灯籠が陳列していた。

「コハク、どれにしようか。」

「使うのはひとり1個だろ? 自分の気に入ったヤツを買えばいいんじゃないか。」

もっともな意見にモモはうーんと悩む。

(わたしって、けっこう優柔不断なのね。)

物欲があまりないかわりに、物事を決めるのが不得手。
初めて知った自分の新しい一面は、あまり嬉しくないものだ。

でも、選べるものがあるというのは、贅沢なことだ。
それだけ選択肢があるってことなんだから。

けれど、灯籠ひとつでこんなに時間を使ってはもったいない。
今ここで決めようと、モモは棚に向かって背伸びした。



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