第44章 剣と秘薬
船に戻った3人は、僅かに残った茶から薬の成分を解析しようと試みた。
「うーん、ダメね。これだけの量じゃ、どうにもならないわ。」
飲んでしまった自分が言うのもなんだが、もう少し量が欲しい。
「味も臭いも無味無臭だったし、なにか手掛かりはないかしら。」
成分がわからないことには、解毒のしようもない。
今のところ身体のサイズ以外には不調もないが、ずっとこのままというのは非常に困る。
「サクヤのヤツ、まだ同じ薬を持ってるかな。クソ、余計なことしやがって…。」
こんなことになるんだったら、薬を差し出された時に、素直に受け取っておくんだった。
後悔しても、すでに遅いが。
「コハク、そんなに気にしないで。万が一このままでも、何年かすれば、また同じ姿に戻れるわ。」
もちろん、子供からやり直すなんて良いわけないが、コハクの気が紛れればと、モモなりの冗談だ。
しかし、そんな冗談に対して、ローは真面目な顔で返してきた。
「イヤ、それは困る。」
「え……。」
そんなことは言われなくてもわかっている。
1番困るのはモモ自身なのだから。
「それはまあ、不便なこともあるでしょうけど…。」
でも、冗談なのだから察して欲しいと思う。
「そうじゃねェ。今のお前はコハクと同じくらいの歳なんだろ。俺はあと10年も待つ気はない。」
「10年…?」
なんのことかと首を傾げる。
しかし、コハクにはローの言いたいことがわかったようで、「ああ…」と頷いた。
「そっか、結婚できるのは16歳からだもんな。」
「けっ…!?」
なんですって!?
息子の口から飛び出したとは思えない発言に、モモは手にしていた器具をガシャーンと落とした。
「あと10年したら、ローは36歳か。もう、おっさんじゃん。」
「このガキ…。」
ローが忌々しげにコハクを睨む中、モモは36歳のローは渋みが増してもっと格好良くなってるんだろうなぁ…なんてことをつい考えてしまったが、すぐにそうではないと首を振った。
結婚ですって?
ローがそんなことを考えていたことにも驚いたが、なにより驚いたのは、それがコハクの口から出てきたことだ。
コハク、あなた、なにを言ってるの?